JFE443CT
省資源型高耐食フェライト系ステンレス鋼
<成分> 21Cr-0.4Cu-Ti-極低(C,N)(SUS443J1)
耐食性比較

溶接性
耐食性
- ニッケル・モリブデン無添加で、SUS304と同等以上の耐食性を実現。
- ニッケルやモリブデン元素を添加していないため省資源で、これらの価格が高騰しても影響を受けません。
- クロム含有量を21%に高めており、SUS304と同等以上の優れた耐食性を持っています。
- 2010年よりSUS443J1としてJIS認証取得。
用途
SUS304の代替として、幅広い用途で使用されています。
建 築 | 屋根、建築金物、エレベータ、エスカレータ、装飾パイプ、カーテンレール、免震エキスパンション |
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産業用機械 | ダクト、半導体・液晶製造装置、通信機筐体、計量器、空調機、制御盤、ドラム缶、パンチングメタル、恒温器 |
輸送用車両・機器 | 冷凍コンテナ、自動車部品 |
厨房機器 | IH対応鍋、流し台、レンジ、レンジフード、バーベキューグリル、調味料入れ |
生活用品 | 郵便受け、ごみ集積箱、物干し竿・台、ショッピングカートゲート |
電気製品 | 冷凍ケース、食器洗浄機、電気炊飯器、電子レンジ |
樋受け金具
建築金具
エレベーター
ドラム缶
灰皿スタンド
恒温器
マフラー部品
鍋
バーベキューグリル
郵便受け
ごみ集積箱
物干し竿・台
ショッピングカートゲート
化学成分
SUS443J1は、クロム(Cr)を21%に高め、耐食性を向上させる銅(Cu)とチタン(Ti)を添加した、 ニッケル、モリブデン無添加の成分です。
〈代表例 %〉
規格記号 | Cr (クロム) |
Ni (ニッケル) |
Cu (銅) |
Ti (チタン) |
Nb (ニオブ) |
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JFE規格 | JIS規格 | |||||
JFE443CT | SUS443J1 | 21.0 | − | 0.4 | 0.3 | − |
SUS304 | 18.2 | 8.2 | − | − | − | |
JFE430CuN | SUS430J1L | 19.2 | − | 0.5 | − | 0.4 |
SUS430 | 16.1 | − | − | − | − |
機械的性質
SUS443J1の実際的な強度の目安になる0.2%耐力はSUS304と同等以上で、 SUS304と同じ板厚で代替できます。
〈代表例 板厚:0.8mm〉
規格記号 | 0.2%耐力 (N/mm²) |
引張強さ (N/mm²) |
伸び (%) |
硬さ (Hv) |
平均r値 | 曲げ性 (曲げ角度180°) |
|
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JFE規格 | JIS規格 | ||||||
JFE443CT | SUS443J1 | 305 | 483 | 31 | 153 | 1.3 | 良好(r=0t) |
SUS304 | 260 | 645 | 60 | 176 | 1.0 | 良好(r=0t) | |
JFE430CuN | SUS430J1L | 356 | 496 | 29 | 158 | 1.3 | 良好(r=0t) |
SUS430 | 320 | 490 | 29 | 164 | 1.0 | 良好(r=1t) |
r=0t 密着曲げ
物理的性質
SUS443J1は、SUS304と比べた場合、下記の優れた特性を持っています。
約40% 熱伝導性が良好です。
約40% 熱膨張が少ないです。

溶接時の変形が少なくなります。
使用時に温度変化による変形が少なくなります。
- 密度が約2.5%小さく、軽量化がはかれます。
- 磁性があるため、磁力選別やマグネットによるハンドリングが可能です。
また、電磁調理鍋などでは特に優れた特性を有します。
規格記号 | 密度 (g/cm³) |
電気抵抗 (10-6Ω・cm) |
磁性 | 比熱 25℃ (J/kg・℃) |
熱伝導率 100℃ (W/m・℃) |
熱膨張係数 20〜100℃ (10-6/℃) |
ヤング率 (GPa) |
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JFE規格 | JIS規格 | |||||||
JFE443CT | SUS443J1 | 7.74 | 58 | あり | 440 | 22.5 | 10.5 | 204 |
SUS304 | 7.93 | 70 | なし | 500 | 16.2 | 17.3 | 193 | |
JFE430CuN | SUS430J1L | 7.73 | 61 | あり | 460 | 24.0 | 10.5 | 203 |
SUS430 | 7.70 | 60 | あり | 460 | 26.1 | 10.4 | 200 |
耐食性
各種塩水噴霧試験結果

暴露試験結果
4年間の沖縄での大気暴露試験では、JFE443CT (SUS443J1) はSUS304より優れた耐食性を示しています。

加工性
SUS304と比較した加工特性の優劣
1.絞り特性に優れ、張り出し特性に劣ります。
2.大ひずみ加工でも置き割れ(時期割れ)が発生しません。
3.加工硬化が小さいです。このため、せん断やプレス成形時の加工負荷が小さい利点があります。
限界絞り比の比較
SUS443J1はSUS304より深く絞れています

SUS304 限界絞り比=2.21 |
SUS443J1 (JFE443CT) 限界絞り比=2.36 |
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8段再絞り結果の比較(ブランク径84mm、板厚0.8mm)
SUS443J1は絞れましたが、SUS304では置き割れが発生して割れました
SUS304 | SUS443J1(JFE443CT) |
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溶接性
1.SUS443J1は、TIG溶接部も良好な耐食性および機械的特性を持っています。
- 溶加材(溶接棒、溶接ワイヤ)にはY316Lを推奨します。
- SUS304との溶接では、Y316L等の溶加材を肉盛りして耐食性の低下を防いでください。
- SUS430との溶接は、耐食性が低下するので避けてください。
2.ミグ(MIG),マグ(MAG)溶接、スポット溶接性も良好です。
SUS443J1のTIG溶接部耐食性に対する溶接棒の影響
1.溶接棒なしやY316L溶接棒では溶接部も母材と同等の良好な耐食性を示しました。
2.Y308溶接棒では溶接部の耐食性が低下して錆が発生しました。
溶接棒なし | Y308 使用 | Y316L 使用 |
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【実験条件】 板厚0.8㎜ 乾湿繰返し腐食試験(JASO-CCT)30サイクル
審査証明

(1)「省資源型高耐食ステンレス鋼 JFE443CT (2B、#800およびHL仕上げ)」は、暴露試験で同じ仕上げのSUS304ステンレス鋼と同等以上の耐食性を持つと判断される。
証明機関 | 一般財団法人 日本建築センター |
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証明日付 | 2012年7月 24日 |
証明番号 | BCJ-審査証明-199 |
技術名称 | 21%クロムステンレス鋼を用いる防食技術 「省資源型高耐食ステンレス鋼 JFE443CT (2B、#800およびHL仕上げ)」 |