ニュースリリース
JFEスチール株式会社
第71回(令和6年度)大河内記念技術賞を受賞
~高濃度硫化水素含有天然ガス輸送鋼管用鋼材の開発~
このたび、当社の開発した高濃度硫化水素含有天然ガス輸送鋼管用鋼材が、(公財)大河内記念会(理事長:山﨑弘郎 東京大学名誉教授)より、第71回(令和6年度)大河内記念技術賞を受賞しました。
大河内記念技術賞は、生産工学および生産技術の上で優れた独創的研究成果をあげ、学術の進歩と産業の発展に多大な貢献をした業績に与えられるものです。贈賞式が、3月25日に日本工業倶楽部会館(東京・丸の内)にて行われました。
1.受賞件名:
「高濃度硫化水素含有天然ガス輸送鋼管用鋼材の開発」
2.受賞者:
菊池 直樹
スチール研究所 副所長
嶋村 純二
スチール研究所 構造材料研究部 グループリーダー
外石 圭吾
スチール研究所 製鋼研究部 主査研究員
松井 穣
DX戦略本部 DX企画部 主査
今仲 大輝
西日本製鉄所(福山地区) 厚板部厚板工場 副工場長
3.開発の概要:
このたび受賞した「高濃度硫化水素含有天然ガス輸送鋼管用鋼材」は、高濃度硫化水素を含有する天然ガス輸送に利用可能な鋼材です。天然ガス輸送に関して、近年高濃度の硫化水素を含むサワーガス輸送鋼管(※1)の極表層の硬化部に発生する硫化物応力割れ(※2)を防ぐために、従来よりも極表層の硬さを低く抑えることが求められています。また、鋼管の素材となる厚鋼板においても、極表層の硬さを全面検査したうえで、全量保証することも求められるようになり、IOGP規格(※3)でも規定化されています。さらに、鋼材の安全性向上および省資源化を目的として、板厚中心部で中心偏析を起因に発生するHICによる破壊事故を回避するため、新たな中心偏析制御技術の開発も必要となりました。
これに対し当社は、高度な冷却制御により低合金設計で高強度と低表層硬度を両立する「極表層硬度制御技術」や独自の非破壊検査により全量品質保証が可能な「極表層硬度全面検査技術」の開発に取り組み、高濃度硫化水素含有環境での耐硫化物応力割れ性能を向上するとともに、量産時の品質保証を含めた安定製造に寄与しました。また、スラブ鋳造時にクレーターエンド計という新しいセンサーを用いた軽圧下位置適正化による「中心偏析制御技術」の開発に取り組み、耐水素誘起割れ(※4)性能向上による鋼材品質の安定化を達成しました。
今後とも当社は、高機能・高品位な高濃度硫化水素含有天然ガス輸送鋼管用鋼材の供給を通じ、さらなる安全性、経済性と信頼性向上に努めるとともに、地球環境の保全に貢献するなど、多様化するお客様のニーズに応えてまいります。
(※1)サワー:硫化水素を含む天然ガス。
(※2)硫化物応力割れ:サワーガス環境にある鋼中に水素が流入することで鋼が劣化し、応力が加わると鋼に割れが生じる現象。硫化水素濃度、負荷応力が高い程割れやすくなる。
(※3)IOGP:International Association of Oil & Gas Producers(オイルメジャー主体の国際ガス生産者協会)。
(※4)水素誘起割れ:鋼中に侵入した水素がMnS等の介在物に集積し割れが発生し、中心偏析による硬化部で割れが伝播する現象。
【贈賞式写真】スチール研究所 菊池副所長(写真中央)と受賞者

【関連URL】
・表層硬さ厳格仕様サワーラインパイプ用UOE鋼管を初出荷
https://www.jfe-steel.co.jp/release/2024/05/240530.html
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