ニュースリリース
JFEスチール株式会社
建築構造用低降伏比780N/mm2級厚鋼板『HBL®630』が
「BLUE FRONT SHIBAURA S棟」に初採用
当社の建築構造用低降伏比780N/mm2級厚鋼板『HBL®630』(*1,表1)が、このたび、野村不動産株式会社と東日本旅客鉄道株式会社が東京ベイエリアにおいて共同推進している大規模複合開発プロジェクト「BLUE FRONT SHIBAURA S棟」で初採用されました。
当社はこれまでにボックス柱用途(図1)として、550N/mm2級厚鋼板『HBL®385』や590N/mm2級厚鋼板『HBL®440』などの高強度な建築構造用厚鋼板を開発し、カーボンニュートラル社会の実現に向けたソリューション(図2,3)を提案してきました。高強度鋼板は、従来の鋼板に比べて鋼重低減および溶接量低減を可能とし、建築物そのものだけでなく製作・施工など様々な場面でのCO2削減効果が期待できます。
「BLUE FRONT SHIBAURA S棟」では『HBL®385』『HBL®440』に加えて、さらに高強度な『HBL®630』が採用されました。『HBL®630』は、当社の独自技術による最適な化学成分設計と、東日本製鉄所(京浜地区)厚板工場の熱処理設備である『Super-RQ』(*2)を活用した高度な冷却制御により、引張強さ規格下限値780N/mm2という高強度と高変形性能(低降伏比)の両立を実現した厚鋼板です。今回採用された『HBL®630』は、780N/mm2級厚鋼板として世界初となる大入熱溶接(*3)が可能な鋼板であり(『HBL®630C-S』と称す)、溶接に要する時間の大幅な短縮を実現します。
当社は今後とも、『HBL®630』の適用拡大を目指していくとともに、お客様の様々なニーズに幅広くお応えできる付加価値の高い建築建材商品・工法の開発に努めてまいります。カーボンニュートラル社会の実現に寄与するエコプロダクトの開発に注力し、社会全体のCO2排出量削減に寄与していくことで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(*1)HBLシリーズ(HITEN-BuiLding)は、JFEスチールの建築構造用低降伏比鋼材のオリジナルブランド。『HBL®630』の名称の630は降伏点又は0.2%耐力の下限値を示す。
(*2)Super-Reheated Quenchingの略。RQは焼入装置の形式Roller Quench(ローラクエンチ)も同時に表す。革新的な再加熱焼入技術および焼入装置の意。圧延後の鋼板を熱処理炉で再加熱してから急冷することを再加熱焼入という。従来の焼入設備では不可能だった冷却の途中停止、冷却速度の焼入冷却途中での変更など、高度な冷却制御を可能にする技術で、厚鋼板の強度や変形性能等の向上が可能となる。
(*3)たとえば板厚85mmの溶接を行う場合、通常のCO2ガスシールドアーク溶接(入熱量30kJ/cm程度)では多数の積層が必要となるのに対し、大入熱エレクトロスラグ溶接(入熱量1000kJ/cm程度)では1パスで溶接することが可能となり、溶接施工時間を1/10以下とすることができる。
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CO2ガスシールドアーク溶接 | 大入熱エレクトロスラグ溶接 |
溶接断面マクロ例 |
【参考】「BLUE FRONT SHIBAURA」概要
事業主体 | 野村不動産株式会社、東日本旅客鉄道株式会社 |
施工者 | S棟:清水建設株式会社、N棟:未定 |
設計 | 株式会社槇総合計画事務所、清水建設株式会社、 オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド、 株式会社日建設計 |
所在 | 東京都港区芝浦一丁目1番1号他 |
区域面積 | 約47,000m2 |
延床面積 | 約550,000m2 |
主要用途 | オフィス・ホテル・商業施設・共同住宅・駐車場他 |
建物高さ | 約230m |
階数 | S棟:地上43階 地下3階 N棟:地上45階 地下3階 |
着工/竣工 (予定) |
S棟:着工2021年10月/竣工2025年2月 N棟:着工2027年度/竣工2030年度 |
関連URL | n2024060302444.pdf (nomura-re.co.jp) |
【写真】

【図1】溶接組立箱形断面柱 (ボックス柱)

【図2】カーボンニュートラル社会の実現に向けたソリューション
【図3】HBL®シリーズCO2排出量比較

BOX柱□-1000mmに対して,材料強度の基準強度に応じて全塑性モーメントMpが同等になるように板厚を選定し(SN490C:90mm,HBL®440C:60mm,HBL®630C:40mm),CO2排出量を試算した結果
【表1】『HBL®630』の規格概要
■化学成分

■機械的特性

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