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ニュースリリース


JFEスチール株式会社

2024年 JFEスチール社長年頭挨拶

代表取締役社長(CEO)北野 嘉久
代表取締役社長(CEO)
北野 嘉久

新年にあたり、ご挨拶申し上げます。

最初に、1月1日に発生しました「能登半島地震」で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々やそのご家族に対して心からお見舞い申し上げます。一日も早い復旧を心からお祈り申し上げます。

次に、安全につきまして、昨年は当社の安全統計における過去最良値と同水準まで改善することが出来ました。これは皆さんがこれまで取り組んできた安全活動の成果の表れと考えています。一方、構内グループ会社において、1件の重大災害が発生し、尊い仲間の命が失われました。誠に残念でなりません。ご冥福をお祈りするとともに、再発防止を徹底し、JFEグループ全体での安全活動を再度強化していきます。

さて、昨年を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症による混乱が収束した一方、世界的なインフレの進展により景気回復が遅れている中で、国内での鋼材需要は人手不足などの影響もあり伸び悩みました。海外での鋼材需要においても、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や中国経済の停滞もあり、減速感が継続しました。

このような環境下ですが、販売価格の見直しや構造改革を中心としたコスト削減などの効果が大きく、当社の収益は前年度より向上し、厳しい環境の中でも3年連続で黒字を達成する見込みです。これらは社員の皆さん一人ひとりがそれぞれの業務で様々な取り組みを行ってきたことによる成果です。

今後は、世界的に経済の回復や新興国の経済成長が見込まれ、鋼材需要も拡大していくものと考えていますが、市況の回復には時間がかかっています。引き続きインフレに対する各国政府の政策や、中東情勢などの地政学リスクを含めた経済環境の変化を注視していく必要があります。

2024年の重点課題

2023年度の収益は粗鋼量が減少する中でも確実に利益を確保できる見通しとなり、7次中期に掲げてきた「量から質への転換」の取り組みが順調に進展して効果が発現してきているものと考えています。本年は7次中期計画の最後の年となります。7次中期で計画している各施策を完遂することにより、更なる収益の拡大を図り、7次中期計画に掲げた以上の収益を達成することができると考えています。

昨年9月に京浜の上工程が休止しました。本年は構造改革後の最初の年となりますが、構造改革後の体制をしっかり構築し運営していくことで、競争力の高い生産体制が実現されます。構造改革効果を最大限享受する新体制を定着させることで、京浜を中心とした構造改革に関わってきた方々の努力にも報いたいと思います。

また、当社の明るい将来を見据え、カーボンニュートラル実現への取り組みや、戦略的な投資の推進も行っていきます。本年もカーボンニュートラルに向けた技術開発、投資、グリーン鋼材の販売拡大を積極的に進めるとともに、高付加価値品種への設備投資や将来性のある分野での海外事業投資を戦略的に進めていきます。

構造改革後の新体制で効率性を最大限発揮し、当社の高い技術力や社員の力を集めてカーボンニュートラルや海外成長戦略への挑戦を行うことで、高品質な製品を供給し、CO2の排出を抑えて地球温暖化の防止に貢献していきます。

このような中、皆さんに重点的に取り組んでいただきたい課題は次のとおりです。

第一は、「新たな生産体制による高収益基盤の確立」です。構造改革後の新体制の中で効率性を最大限発揮し、製造における上方弾力性を確保するために、各ミルでの生産能力の最大化や生産性向上活動を追求してください。また、高付加価値製品比率の向上やOPY向上などの7次中期に掲げたテーマを完遂することで、競争力の高い生産・販売体制を実現します。販売面においては、これまでの商習慣、営業・販売の方法にとらわれずに、付加価値に見合ったエキストラの獲得やプロダクトミックスの改善により、さらなる収益性確保に取り組んでください。

第二に、「カーボンニュートラル世界実現に向けた挑戦」です。当社は2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2024年度末のCO2排出量を2013年度比で18%削減する目標を掲げております。本年は当目標を達成する年となりますので、CO2削減のための各種対策を着実に実現へ結びつけてください。また、昨年度販売を開始したグリーン鋼材「JGreeX®」の高い環境価値の魅力をお客様へ伝え、販売先の開拓や拡大に向けた取り組みを推進していきます。カーボンニュートラルの実現に向けては、高効率・大型電炉の導入や超革新技術であるカーボンリサイクル高炉法、直接水素還元製鉄法の開発が必要となります。これらの夢のある新たな技術開発に向けて、政府や国内他社と共同で挑戦します。また、倉敷への高効率・大型電炉の導入の具体的な検討を進め、カーボンニュートラル実現に向けたビジョンの実現性を高めていきます。

第三に、「サステナブルな成長戦略の推進」です。次世代社員が担う未来の会社の永続的な成長を見据え、電磁鋼板などの成長分野での戦略品種の製造・販売を拡大するための設備投資を進めていきます。また、海外メーカーとの高級鋼販売や原料調達のための提携の拡大を進めることで、海外事業を拡大する成長戦略を推し進めていきます。国内事業で培った知識・技能・データを海外メーカーに販売するソリューションビジネスも当社の新たな事業として引き続き拡大していきます。

第四に、「DX技術の活用」です。AIやIoTなどのデジタル技術を積極的に導入することで、生産性の高い効率的な職場環境の構築や、より付加価値のある業務を遂行することが可能となります。本年も引き続き、全プロセスのCPS(サイバーフィジカルシステム)化による設備安定化に向けた取り組みを進めるとともに、製造部門に限らず幅広い部門やプロセスへのデジタル技術の導入によるDXを推進します。製鉄所のシステムリフレッシュによるオープン系への移行も着実に実行していきます。また、特定の部門や階層だけでなく、全社員のDXリテラシーを向上させるための研修も行っています。社員の皆さんもDXに関連する最新の技術を積極的に学ぶことでスキルアップを図り、自職場にデジタル技術を取り込むことによってスマートで働きやすい職場環境をつくってください。

本年は8次中期計画を策定する年でもありますが、本計画を策定するにあたっては、当社の未来の長期ビジョンを描き、将来のありたい姿を見据えた検討をしていきたいと考えております。各部門においても8次中期計画を策定するにあたっては、自部門の未来の姿を思い描きながら今後の取り組みを検討してください。

2024年の行動指針

2024年は構造改革後の新たなJFEスチールを社員全員の力で構築していく年になります。会社にとって社員は成長のための原動力であり、最も大事な財産だと考えています。社員の皆さんが働きがいを持ち、明るい未来を向いて成長していけるように、本年は働きがい向上のための具体的な取り組みをしていきます。皆さんも業務を行うにあたり、以下の3点のことを心掛けてみてください。

一つ目は、「新しいことに挑戦する気持ち、姿勢を持ち続けてほしい」ということです。世界はグローバル化が進み、各業界ではカーボンニュートラル世界を目指して技術革新が行われています。このような目の前に広がっている大きなフィールドを挑戦の場と捉えて、最先端の技術や知識を学び、恐れずに新しい発想で挑戦してみてください。上司は職場の未来やビジョンを語り、部下に挑戦できる機会を与え、背中を押しながらフォローしてあげてください。会社は若手社員の成長を楽しみにしており応援しています。しっかり学び、臆せず挑戦し、挫折しても起き上がり、たくましく成長を遂げてほしいと思います。社員が生き生きと新しいことへ挑戦することを皆が称える豊かな会社でありたいと思います。

二つ目は、「自ら考え、自ら語り、自ら行動しよう」ということです。業務を行なうにあたり、自分に関係した分野だけでなく広くさまざまな分野での見聞を広め、本質を見抜く力や考える力を養ってください。また、相手に伝えるコミュニケーション力を磨き、自分の考えを多くの人に伝え、多くの共感する仲間をつくってほしいと思います。多くの仲間とともに挑戦すればきっと思いは実現できます。さらに、自ら行動して周囲に示してほしいと思います。行動することで失敗することもあると思いますが、再び徹底的に考え、語り、行動し、軌道修正を行って乗り越えていってください。

三つ目は、「個々人の能力や多様性を存分に発揮してほしい」ということです。社会ではさまざまな事業環境の変化が起きており、こういった複雑な変化に対応するために、ダイバーシティー&インクルージョン(多様性とその受容)が重要だと考えています。さまざまな発想や異なる価値観が混じり合うことで、事業環境の変化に対応できるイノベーションは生まれます。上司には部下の長所を伸ばし、多様な意見は会社の財産と思って尊重してほしいです。社員の皆さんは自身の個性を理解したうえで、その個性を活かして仕事をどう発展させて成果を得られるか、考えてみてください。社員が生き生きと新しいことを発想して行動し、周囲もコミュニケーション豊かに意見を出し合う活気のある職場、お互いのプライベートやライフスタイルを尊重し合う職場、そのような職場づくりをしていきましょう。

当社が家族や社内外に誇れる会社になるには、社員全員が健康で生き生きと働ける安全な職場づくりが不可欠です。安全活動は、各事業所・地区の所長がリーダーシップをとって地区ごとに推進し、管理・監督者の皆さんは、作業者や協力会社とのコミュニケーションをしっかりと取り、問題や課題がどこにあるのか問いかけて改善し、安全最優先を各職場に浸透させてください。現場第一線で働く皆さんは、「凡事徹底」を心掛け、ルールや改善を徹底的にやり抜くということを継続してください。安全活動は継続することが何よりも大切です。引き続き、やるべきことを怠らず、「自立した職場づくり」と「規律ある職場づくり」を実現させて下さい。

企業活動は社会からの信頼のもとに成り立っています。ひとつのコンプライアンス違反がものづくりに対する信頼の根幹を揺るがし、企業そのものの存続を脅かす事態になりかねないということを肝に銘じ、今一度、気を引き締め直してほしいと思います。

結び

最後に、労働組合の皆さんに一言申し上げます。非常に変化の大きい経営環境下で、さまざまな経営課題に対応していくためには、これまでにもまして労働組合の皆さんのご理解とご協力が不可欠です。労使で十分に意思疎通を図り、この変革の中で会社も社員もともに成長を遂げていきたいと思っています。引き続き、よろしくお願いいたします。

以上、年頭にあたり所信を申し述べました。本年が皆さんとご家族にとって実り多く健康で笑顔のあふれる一年となりますよう心から祈念し、新年の挨拶といたします。