ニュースリリース
JFEスチール株式会社
2023年 JFEスチール社長年頭挨拶
明けましておめでとうございます。新年にあたり、ご挨拶申し上げます。
最初に、安全につきまして、昨年は1件の重大災害が発生し、尊い命が失われました。決して起きてはならないことであり、誠に残念でなりません。ご冥福をお祈りするとともに、再発防止を徹底していきます。
社会の中で事業活動を営む企業の経営者として、全職場が安全で安心して働ける環境となることについて、改めて責任を持つ決意と覚悟を固め、引き続き「安全はすべてに優先する」の基本理念のもと、安全活動の推進、強化を行っていきます。
さて、昨年を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症による混乱が落ち着きを見せ、世界的に経済が持ち直す動きの中で国内市況は堅調に推移しました。一方で、ロシア・ウクライナ情勢に端を発する資源・エネルギー価格の上昇やサプライチェーンの混乱もあり、輸出市況は下落に転じました。
このような環境下においても、販売価格の見直しや第7次中期経営計画に沿ったコスト削減などの活動での社員の皆さんの努力も大きく、2年連続でセグメント利益は黒字を達成する見込みです。
足元では、国内は緩やかな景気回復の流れが続く一方で、世界的にはインフレを背景とした金融引き締めやエネルギーの供給制約などにより、減速感が強まっています。引き続きウクライナ情勢やインフレ・金融環境の正常化に向けた政府の政策も含めた経済環境の変化を注視していく必要があります。
2023年の重点課題
2022年度の収益は2期連続で黒字を達成する見通しですが、棚卸資産評価差などによる実力外での増益要因も多く、実力損益の確保という面では道半ばと言わざるを得ません。世界トップクラスの競争力を実現するために、7次中期で掲げた量から質への転換をより一層進める必要があります。
特に本年は、構造改革を実行する年となります。構造改革を着実に完遂することで競合他社にキャッチアップし、さらに7次中期で掲げたコスト削減計画の実行や、構造改革後の体制下で生産性を高めることなどにより、世界トップクラスの収益性を実現することが可能となります。全社一丸でこれら構造改革と収益向上活動に取り組んでいきます。
また、カーボンニュートラルの実現こそが将来にわたって国際競争力を発揮するために当社が目指すべき姿であり、カーボンニュートラル実現に向けた技術開発やグリーン鋼材の販売の取り組みを積極的に推進していきます。
構造改革を中心にグループ全体で経営資源の選択と集中を図ることで効率性を極限まで追求し、さらに当社の高い技術力の粋を集めてカーボンニュートラルや海外成長戦略への挑戦を行い、世界最高クラスのトン当たり収益性を実現する、環境や時代に即した、お客様に愛される企業への成長を果たしていきます。
このような中、皆さんに重点的に取り組んでいただきたい課題は次のとおりです。
第一は、「構造改革による生産体制再構築と世界トップクラスの収益力確保」です。2023年9月末に控えている構造改革の完遂に向けて、商品の製造移管や物流体制の構築など円滑な体制への移行を実現させるとともに、構造改革後の体制に向けて粗鋼、熱延の生産能力を高めることや、コークス炉の補修強化および劣化更新により、安定的かつ生産性の高い体制の構築を目指します。また、生産性向上活動を各部門で実施し、業務の効率性を追求してください。販売面においても、原料や諸物価の上昇分のみならず、価値に見合ったエキストラ・価格体系の見直しやプロダクトミックスの改善により、収益性確保に取り組んでください。
第二に、「カーボンニュートラルに向けた夢のある挑戦」です。当社は2050年カーボンニュートラル実現に向けて、2024年度末のCO2排出量を2013年度比で18%削減する目標を掲げています。本年は当目標を達成するべく、溶銑配合率の低減、高炉還元材比の削減、省エネ活動の推進などの各種対策による成果を着実に積み上げていくことを意識してください。また、カーボンニュートラルの実現に向けては、高効率・大型電炉の導入や超革新技術であるカーボンリサイクル高炉法、直接水素還元製鉄法の開発が必要となります。これら新技術の開発に向けて、政府や国内他社と共同でグリーンイノベーション基金を活用した試験炉の建設に着手し、海外鉄鋼会社よりも優位性の高い技術開発に挑戦します。さらに、本年は低炭素技術により製造するグリーン鋼材の販売開始に向け、お客様が求める環境価値の高い製品の供給スキーム構築に向けた取り組みを進めていきます。
第三に、「海外成長戦略による事業拡大」です。世界的にカーボンニュートラル時代に向けたマーケットの変革が起きている中、自動車の電動化や発電の効率化に即した電磁鋼板などの高級鋼への需要が高まっています。海外メーカーとの提携拡大などによりこれら高級鋼の販売拡大を行うことで、当社の海外事業を拡大する戦略を進めていきます。また、国内事業で培った知識・技能・データを海外メーカーに販売するソリューションビジネスも引き続き拡大していきます。
第四に、「DX技術の活用」です。本年も各設備へのセンサー導入と最新モデル化技術による操業状況の見える化などを進め、全ラインのCPS(サイバーフィジカルシステム)化による設備安定化に向けた取り組みを進めていきます。また、引き続き製鉄所業務改革を進め、ホストからオープン系への移行などのシステムリフレッシュも行っていきます。会社としてDX技術の導入を推進する一方で、データサイエンティストの育成や社員全般のデジタルリテラシーを向上させることなど、リスキリングにも取り組んでいきます。社員の皆さんもそのフィールドを活用して、これらDX技術を積極的に学ぶことでスキルアップを図ってください。そして、各職場の業務にDX技術を取り込んでいくことで、生産性の高い働きやすい職場づくりを行うことに挑戦してみてください。
2023年の行動指針
2023年は当社設立から20周年を迎える節目の年になりますが、当社が新たなステージへ飛躍するための大きなステップの年にもなります。この創立以来最大の変革には全社員が関わり、全社員の挑戦と行動により取り組んでいきたいと考えています。そのために、以下の3点のことに心掛けて行動してください。
一つ目は、「新しいことに挑戦する気持ち、姿勢を持ち続けてほしい」ということです。カーボンニュートラル、海外マーケット、新技術など、私たちの周りには変化の大きい世界が広がっています。これらの変化を恐れずに挑戦フィールドと捉え、最先端の技術や知識を学ぶこと、新たなやり方を積極的に取り入れて改革することを実践してみて下さい。上司は会社やその職場の将来ビジョンを語り、部下に挑戦できるフィールドを与えて、取り組みを温かくフォローしてください。また、若手社員の将来に会社は期待しています。臆せず挑戦し、失敗も糧にしながら諦めずに頑張り、成長を遂げてほしいと思います。社員の皆さんが生き生きと新しいことへ挑戦することを褒める豊かな会社にしていきたいと思います。
二つ目は、「自ら考え、自ら語り、自ら行動しよう」ということです。それぞれの業務において高いアンテナで様々なことを積極的に学び、その情報を踏まえて何をすべきか徹底的に考え抜いてください。さらに、相手に伝えるコミュニケーション力を磨き、交流を拡げ、自分の考えを語りながら連携して業務を進めることで、皆さんの思いを実現してください。仕事をする中で、大きな環境変化やトラブルにより、思い通りにいかない局面も多くあると思います。そのようなときでも恐れずに前に進み、徹底的に自分自身で考えて行動し、立ち向かっていってください。また、若い社員の新たな発想やアイデアにも期待しています。各人それぞれの置かれた立場や持ち場で考え、高いコミュニケーション力や行動力により存在感を出すことを心掛けてください。
三つ目は、「個々人の能力や多様性を存分に発揮してほしい」ということです。当社はダイバーシティー&インクルージョン(多様性とその受容)を経営戦略として積極的に推進しています。様々な発想や異なる価値観が混じり合うことで、イノベーションは生まれます。管理者の方々は各職場で多様な人材や意見は会社の財産と思って尊重してほしいですし、社員の皆さんには自身の個性を理解したうえで、その能力を活かして会社の成果にどうつなげられるかを前向きな姿勢で考え、取り組んでみてほしいと思います。引き続き、社員が生き生きと新しいことを発想して行動し、周囲もコミュニケーション豊かに意見を出し合い、各職場で様々なイノベーションを起こしていけるようお願いします。
当社が家族や社内外に誇れる会社になるには、社員全員が健康で生き生きと働ける安全な職場づくりが不可欠です。安全活動は、各事業所・地区の所長がリーダーシップをとって地区ごとに推進し、管理・監督者は作業者や協力会社とのコミュニケーションをしっかり取り、問題や課題がどこにあるのか問いかけて改善してください。また、基本に立ち返って、5Sを徹底することや類似災害防止活動をしっかりと自分事として捉えて行うことが重要です。そして、作業者の皆さんは「凡事徹底」を心掛け、「自立した職場づくり」とともに「規律ある職場づくり」を実現してください。
企業活動は社会からの信頼のもとに成り立っています。ひとつのコンプライアンス違反がものづくりに対する信頼の根幹を揺るがし、企業そのものの存続を脅かす事態になりかねないということを肝に銘じ、今一度、気を引き締め直してほしいと思います。
結び
最後に、労働組合の皆さんに一言申し上げます。非常に変化の大きい経営環境下で、様々な経営課題に対応していくためには、これまでにもまして労働組合の皆さんのご理解とご協力が不可欠です。労使で十分に意思疎通を図り、この変革の中で成長を遂げていきたいと思っています。引き続き、よろしくお願いいたします。
以上、年頭にあたり所信を申し述べました。本年が皆さんとご家族にとって実り多く健康で幸せな一年となりますよう心から祈念し、新年の挨拶といたします。