ニュースリリース
JFEスチール株式会社
第68回(令和3年度)大河内記念技術賞を受賞
~建築構造用低降伏比高強度厚鋼板『HBL®シリーズ』~
このたび、当社の開発した建築構造用低降伏比高強度厚鋼板「HBL®シリーズ」が、(公財)大河内記念会(理事長:山﨑弘郎 東京大学名誉教授)より、第68回(令和3年度)大河内記念技術賞を受賞し、昨日、日本工業倶楽部会館(東京・丸の内)にて贈賞式が行われました。
大河内記念技術賞は、生産工学および生産技術の上で優れた独創的研究成果をあげ、学術の進歩と産業の発展に多大な貢献をした業績に与えられるものです。
1.受賞件名:
「国土強靭化に資する環境対応型高耐震性高強度鋼板の開発」
2.受賞者:
末吉 仁 | スチール研究所 鋼材研究部 主任研究員 |
室田 康宏 | 東日本製鉄所(京浜地区) 商品技術部 厚板室 主任部員 |
大森 章夫 | 厚板セクター部 主任部員 |
中川 佳 | 建材センター 建材企画部 主任部員 |
藤沢 清二 | 建材センター 建材技術部 建築技術室 室長 |
3.開発の概要:
このたび受賞した建築構造用低降伏比高強度厚鋼板「HBL®シリーズ」(*1)は、高層建築構造物の鉄骨柱や梁に用いられる耐震性に優れた高強度鋼板(図1、写真2)です。建築構造物の超高層化や快適な空間を得るための大スパン化(鉄骨柱の本数削減)のために高強度鋼板のニーズが高まっており、かつ、大地震にも耐えうる優れた変形性能(低降伏比)(*2)を有する鋼板が求められていました。さらに、鉄骨柱(ボックス柱)を製作する際の鋼板の溶接において、高能率で大幅な省力化を実現できる超大入熱溶接(最大入熱:~100kJ/mm程度)を適用可能とするために、溶接部の高靭化も大きな課題でした。加えて、環境負荷低減の観点から省資源化および鋼板製造時や建設時のCO2削減も必要となっていました。
これに対し当社は、緻密な化学成分設計技術と、当社独自の熱間圧延-冷却制御技術を駆使した高度な鋼板製造プロセスにより、低合金成分設計で軟質相と硬質相からなる極めて微細な複相組織とする先進的な組織制御技術および微量元素を活用した超大入熱溶接部を高靭化するマイクロアロイング技術を確立しました。
当社は、これまでに「HBL®シリーズ」として、490N/mm2級厚鋼板『HBL®325』や550N/mm2級厚鋼板『HBL®385』、590N/mm2級厚鋼板『HBL®440』など、最大板厚が100mmにもなる建築構造用厚鋼板を開発し、多くの建築構造物(写真3)に適用されています。いずれも超大入熱溶接が可能で、高強度かつ低降伏比を有しており、建築構造物の高層化と耐震性の確保および溶接施工の省力化に寄与するとともに、高強度鋼板適用による鋼板重量の低減を通して省資源化やCO2削減にも大きく貢献しています。今回開発した鋼板は、持続可能な開発目標(SDGs)の優先課題でもある国土強靭化に資するものであり、今後の都市や社会の発展と人々の暮らしの安全性の向上に大きく寄与するものです。
当社は、今後ともお客様の様々なニーズにお応えできる高機能・高品位な鋼材の供給を通して、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(*1)HBL®
HITEN-BuiLdingの略。High Performance Steel Plates for BuiLdingの意味も同時に表します。当社の建築構造用低降伏比厚鋼板のオリジナルブランド名。(『HBL®385』や『HBL®440』の名称の385や440は、降伏点又は0.2%耐力の下限値を示します。)
(*2)低降伏比
降伏比は降伏応力と引張強さの比で表されます(降伏比=降伏応力(降伏点又は0.2%耐力)/引張強さ)。鉄骨柱に低降伏比の鋼板を適用することで、大地震時に鋼板が低い応力で大きく変形することにより、地震のエネルギーを吸収して建築構造物の倒壊を防ぎ、耐震性を向上することができます。今回開発した鋼板「HBL®シリーズ」の降伏比は80%以下になっています。
【写真1】日本工業倶楽部会館での贈賞式にて
(左より、藤沢氏、末吉氏、大森氏、中川氏)
【図1】 建築構造物の鉄骨柱(ボックス柱)
【写真2】HBL®385を用いた鉄骨柱(ボックス柱)
【写真3】HBL®385を用いた超高層建築物の例 虎ノ門ヒルズエリアプロジェクト
(写真提供 森ビル株式会社)
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