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ニュースリリース


JFEスチール株式会社

2022年 JFEスチール社長年頭挨拶

代表取締役社長(CEO)北野 嘉久
代表取締役社長(CEO)
北野 嘉久

明けましておめでとうございます。新年にあたり、ご挨拶申し上げます。

最初に、安全について一言申し上げます。昨年は1件の重大災害が発生し、尊い命が失われました。まことに残念でなりません。ご冥福をお祈りするとともに、二度と同じ災害を繰り返さないための再発防止を徹底していきます。
安全は企業活動の根幹であり、安全成績の向上なくして企業の成長はありません。社会の中で事業活動を営む企業の経営者として、皆さんの命と安全に関して責任を持つ決意と覚悟を新たにするところであります。 引き続き「安全はすべてに優先する」の基本理念のもと、安全活動の推進、強化を行っていきます。

さて、昨年を振り返りますと、引き続き新型コロナウイルスの世界的な感染拡大がありましたが、ワクチン接種の普及もあり海外経済は回復に向かい、輸出市況は大幅に改善しました。また、国内においても同様にワクチン接種の普及や感染者数の減少に伴い、経済活動は徐々に回復基調となりました。
2021年度の業績は、原料コスト上昇分の鋼材価格への反映に加え、輸出市況の上昇に伴う販売価格の改善、国内外のグループ会社の改善、および第7次中期経営計画に沿ったコスト削減などにより、3年ぶりにセグメント利益の黒字化を見込んでいます。 一方で、世界的な半導体不足や東南アジアや新興国におけるコロナ再拡大による部品供給制約の動向や、主原料に加え金属・スクラップの高騰など、先行きには不透明感があります。また、新型コロナウイルスの新たな変異型による感染拡大リスクや経済への影響など、注視していく必要があります。

2022年の重点課題

2021年度の収益は対前年度比で大幅に回復する見通しですが、内訳を見ると棚卸資産評価差など一過性の増益要因が多くを占めており、構造的な収益力の回復とは言えません。また、スプレッドも輸出を中心とした改善であり、中国や新興国の動向次第で輸出市況や原料価格が大きく変動し、当社の収益に大きく影響を与えるという構造に、今後さらに拍車がかかってくると想定されます。
本年は、缶用鋼板事業の福山地区への集約や、千葉地区の第6高炉改修など、構造改革が本格化する年となります。商品の製造移管対応や設備・物流・システムなどの生産体制構築、直協の社員対応、製品の先造り対応など、引き続き構造改革の完遂に向けて取り組んでいきます。 また、昨年策定した7次中期を着実に実行するとともに、販売価格の改善と、生産性向上や歩留改善などのコスト削減との両輪で収益力の向上を図ります。2021年度は主原料価格や諸物価上昇の影響などにより、特に国内は各セクターとも再生産可能な収益レベルには至っていません。販売価格の改善に向けては、主原料を含む諸物価上昇分の早期反映や付加価値に見合った価格への改訂、ならびにエキストラ価格の見直しなど進めていますが、本年はさらに強化していきます。 そして、カーボンニュートラルに向けた技術開発や、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した新たな取り組みも加速し、当社が持続的に成長できる新たなステージを目指していきます。 今後は、カーボンニュートラルに対応できない会社は国際競争力を失い、淘汰される時代となっていきます。多額の研究開発費用や設備投資費用が必要となるため、財務健全性の確保にも取り組んでいきます。

このような中、皆さんに重点的に取り組んでいただきたい課題は次のとおりです。
第一は、「スリムで強靭な事業構造への変革」です。引き続き構造改革の完遂に向けて取り組んでいくとともに、プロダクトミックスの高度化や、価値に見合った価格体系の再構築によるマージン拡大など、量から質への転換に向けた対応を迅速に進めてください。特に国内販売の収益改善は強い課題意識を持って取り組んでください。また、DXも活用した労働生産性の向上や歩留改善など、7次中期で計画した各種コスト削減を着実に行い、実力ベースでのトン当り収益の拡大を進めてください。 第二に、「財務基盤確立に向けた活動」です。各事業所はあらためて製造実力の向上に粘り強く取り組み、財務基盤の大前提となる生産と品質の安定化を確実に進めてください。また、投資効果発現と財務健全性の両立を図りながら、必要な機能維持投資に加え、収益向上投資や設備の新鋭化、GX(グリーントランスフォーメーション)・DXなどの成長投資を積極的に行っていきます。その投資資金確保の一環として、選択と集中による保有資産の圧縮を進めるとともに、在庫についても新しい切り口と合理性を追求のうえ圧縮するよう精力的に進めてください。 第三に、「カーボンニュートラルに向けたイノベーション推進」です。気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付け、"JFEグループ環境経営ビジョン2050"を策定しました。昨年10月にはカーボンニュートラル推進会議を設置し、カーボンニュートラルに関わる各組織・プロジェクトの重要課題を一元的に審議・決定し、迅速かつ効率的に対応を進めていくことにしました。本年は、2024年度末のCO2排出量を2013年度比で18%削減する目標を確実に達成するべく、溶銑配合率の低減、高炉還元材比の削減、省エネ推進などの各種対策を加速していきます。あわせて、昨年新設したカーボンリサイクル開発部や新溶解プロセス開発部を中心に、新プロセスの技術開発も本格化していきます。また、2050年のカーボンニュートラルに向けて、水素還元製鉄や大型電炉による高級鋼製造など超革新的技術の早期確立に向けて、当社のみならず日本鉄鋼業界全体の英知を結集し、世界をリードする技術開発を強力に進めていきます。 第四に、「DX技術の活用、海外事業の成長加速・拡大」です。本年も各設備へのセンサー導入と最新モデル化技術による操業状況の見える化などを進め、全ラインのCPS(サイバーフィジカルシステム)化による設備安定化に向けた取り組みを進めていきます。各職場でも、これまでの仕事のやり方や社内の常識にとらわれることなく、前向きかつ積極的にDX技術を活用し、リモート化や自動化、およびロボット活用など、革新的な生産性向上をどんどん進めてください。また、国内事業で培った知識・技能・データをプラットフォーム化したうえで提供するソリューションビジネスにも引き続き注力のうえ、海外事業の成長を加速・拡大していきます。

2022年の行動指針

7次中期の4年間は、構造改革の実行やカーボンニュートラルに向けた技術開発、DXの積極活用や海外事業の成長・拡大など、当社が新たなステージへ飛躍するため「創立以来最大の変革に挑戦」する重要なタイミングになります。そのような中、皆さんには次の三点を心掛けて行動してほしいと思います。
一つ目は、「新しいことに挑戦する気持ち、姿勢を持ち続けてほしい」ということです。これまで積み重ねてきたルールや技術、管理方法を継続するだけでは、世界の競合各社が成長する中で、あっという間に劣位となってしまいます。時間の経過とともに必要性が薄れたり形骸化してしまったりした仕事は、上司が先導して徹底的にスリム化したうえで、新たな取り組みを積極的に進めてください。カーボンニュートラルは大きな試練である一方、新たな鉄鋼ビジネスを構築する挑戦と成長の機会です。上司は会社やその職場の将来ビジョンを語り、部下の挑戦をしっかりと奨励してください。そして、若手社員が新しいことに挑戦し失敗しても決して責めない、むしろ挑戦したことを褒めるマネジメントをお願いします。また、特に次代を担う若手社員は無難に仕事をするのではなく、臆せず挑戦し、成功も失敗も経験して成長してほしいと思います。 二つ目は、「自ら考え、自ら語り、自ら行動しよう」ということです。何をすべきか徹底的に考え抜き、相手に伝えるコミュニケーション力を磨き、行動力と実行力を持ってください。仕事をする中では、想定外のトラブルや環境変化により、計画したことが困難となりそうな場面が多々あります。そのようなときこそ徹底的に考え、語り、行動し、高いアンテナと柔軟な発想で軌道修正を行うなどして、粘り強く乗り越えるようにしてくださ い。また、若い社員の柔軟で新鮮な発想やアイデアも重要であり、積極的なアウトプットが不可欠です。各人それぞれの置かれた立場や持ち場で、なすべきことを自ら考え、行動に移すことを心掛けてください。 三つ目は、「個々人の能力や多様性を存分に発揮してほしい」ということです。ここまで申し上げて来たように、当社を取り巻く環境変化のスピードは私たちの想像を超えたものになっています。この変化に対応していくうえで、私たちには大きな変革とイノベーションが求められています。イノベーションを起こすためには、多様な人々が集まり、さまざまな価値観や知がぶつかり合い混ざり合うこと、すなわちダイバーシティー&インク ルージョン(多様性とその受容)が重要な役割を果たすと考えます。ダイバーシティーは会社が存続するための経営戦略であり、着実に取り組みを進めていきます。それぞれの職場でも、各社員の多様な能力や考え方、そして働き方を尊重し、引き続き社員が生き生きと新しいことに挑戦し、その力を存分に発揮できる会社となっていくよう取り組んでください。

当社が家族や社内外に誇れる会社になるには、社員全員が健康で生き生きと働ける安全な職場づくりが不可欠です。安全活動は、各事業所・地区の所長がリーダーシップを取って地区ごとに推進し、管理・監督者は毎日現場に出て現場を掌握し、足らざる点を見つけ、作業者とのコミュニケーションをしっかりとって改善してください。さらに、過去に発生した事故・災害を振り返り、類似災害防止活動にも力を入れることが重要です。そして、作業者の皆さんは「凡事徹底」を心掛け、「自立した職場づくり」とともに「規律ある職場づくり」を実現してください。
また、企業活動は社会からの信頼のもとに成り立っています。ひとつのコンプライアンス違反がものづくりに対する信頼の根幹を揺るがし、企業そのものの存続を脅かす事態になりかねないということを肝に銘じ、今一度、気を引き締め直してほしいと思います。

結び

最後に、労働組合の皆さんに一言申し上げます。非常に変化の大きい経営環境下で、さまざまな経営課題に対応していくためには、これまでにもまして労働組合の皆さんのご理解とご協力が不可欠です。労使で十分に意思疎通を図り、この難局を乗り切っていきたいと思っています。引き続き、よろしくお願いいたします。

以上、年頭にあたり所信を申し述べました。本年が皆さんとご家族にとって実り多く健康で幸せな一年となりますよう心から祈念し、新年の挨拶といたします。