ニュースリリース
JFEスチール株式会社
「高能率超狭開先溶接システムの開発」が
第56回機械振興賞 機械振興協会会長賞を受賞
当社が開発した「高能率超狭開先溶接システム」が、このたび一般財団法人機械振興協会(会長:釡 和明)から第56回機械振興賞 機械振興協会会長賞を受賞しました。
機械振興賞は、我が国機械工業における技術開発の一層の促進を図るため、優秀な研究開発およびその成果の実用化によって、機械産業技術の進歩・発展に著しく寄与したと認められる企業・大学・研究機関および研究開発担当者に対して毎年与えられるものです。当社の機械振興賞の受賞は4年連続11回目となります。
1.受賞技術名
「高能率超狭開先溶接システムの開発」
2.受賞者
上月 渉平 | スチール研究所 接合・強度研究部 主任研究員 |
大井 健次 | スチール研究所 主席研究員 |
藤沢 清二 | 建材センター 建材技術部 建築技術室 室長 |
飯谷 邦祐 | JFE STEEL ASIA PTE.LTD. Senior Engineer |
早川 直哉 | JFEテクノリサーチ株式会社 構造材料ソリューション本部 接合評価センター センター長 |
角 博幸 | JFEテクノリサーチ株式会社 構造材料ソリューション本部 構造材料評価センター 主査 |
板谷 俊臣 | 株式会社永井製作所 管理部 部長 |
小林 健史 | ヤマネ鉄工建設株式会社 品質管理部 係長 |
3.開発の概要
当社は、お客様からの溶接施工能率のさらなる向上に対する要望に応えるため、溶接量を大幅に削減できる「高能率超狭開先溶接システム」を開発しました。溶接施工能率の大幅な向上を通じて、工期短縮や施工コスト低減に加え、エネルギー使用量やCO2排出量の削減も可能となります。
溶接能率を向上させるためには、溶接を行う母材間に設ける溝(開先)を狭くすることで、溶接量を削減する狭開先溶接が有効ですが、スパッタ(※1)の発生や溶込み不足等によって、健全な溶接部を得ることが難しいという課題がありました。
本開発技術では、極低スパッタ、安定したアーク(※2)と深い溶込みを特長とする『J-STAR®溶接』(※3)と、溶接部の積層方法や開先形状の最適化および溶接ワイヤ曲率のコントロールを組み合わせることで、狭開先よりもさらに狭い「超狭開先」でも、溶接欠陥の無い健全な溶接部を得ることができます(図1)。開先断面積を従来の約3分の1(※4)に縮小することで、溶接量を従来の約3分の1に削減することが可能となりました(図2)。
実施工にあたっては、株式会社永井製作所およびヤマネ鉄工建設株式会社と共同で、溶接施工技術を確立しました(図3)。既に、熊本城復旧整備事業や首都圏のオフィスビルなどに適用されており、建設現場での溶接施工能率の大幅な向上に貢献しています。
当社は今後とも、お客様の様々なニーズにお応えできる付加価値の高い商品や施工技術の開発を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
(※1)スパッタ
溶接中に飛散する金属粒。
(※2)アーク
電気エネルギーによってプラズマ化した高エネルギー密度流体。同時に発生する熱を利用して溶接する。
(※3)J-STAR®溶接
J-STARはJFE Spray Transfer Arcの略。アーク安定剤として適量のREM(Rare Earth Metal:希土類金属)を添加した溶接ワイヤを用い、極性を従来とは逆のワイヤ側をマイナスとした炭酸ガスアーク溶接方法。指向性が強く安定した円錐状アークの形成と、溶融ワイヤ(溶滴)の微細化による連続的かつ安定した溶接(微細スプレー移行)の実現により、スパッタ発生量の大幅な低減と深い溶込みを得ることができるのが特徴。
(※4)板厚100mmの場合の一例。
【図1】高能率超狭開先溶接システム

【図2】従来手法と超狭開先溶接の溶接断面(板厚100mmの場合の一例)

【図3】本開発技術の施工の様子

【関連URL】
熊本城天守閣復旧整備事業に高施工性CO2アーク溶接技術『超狭開先J-STAR®溶接』を適用