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JFEスチール株式会社

全国発明表彰を8年連続で受賞
~船舶の安全性を高めた溶接構造体「構造アレスト」~

当社はこのたび、船舶の安全性を高めた溶接構造体「構造アレスト」の発明により、令和3年度全国発明表彰(※1) 日本経済団体連合会会長賞を、ジャパン マリンユナイテッド株式会社および株式会社IHIと共同で受賞しました。当社の全国発明表彰受賞は8年連続で、JFEスチール発足以来12回目となります。6月22日、オークラ東京(東京都港区)において表彰式が開催されました。

1.受賞件名:
「船舶の安全性を高めた溶接構造体の発明」

2.受賞者:

半田 恒久 スチール研究所 接合・強度研究部 主任研究員
伊木 聡 スチール研究所 接合・強度研究部長
豊田 昌信 ジャパン マリンユナイテッド株式会社 商船・海洋・エンジニアリング事業本部 海上物流イノベーション推進部 イノベーション企画グループ長
(現 日本シップヤード株式会社 営業本部 商品企画部 新技術開発グループ長)
木治 昇 ジャパン マリンユナイテッド株式会社 商船・海洋・エンジニアリング事業本部 生産センター 生産イノベーショングループ長
猪瀬 幸太郎 株式会社IHI 技術開発本部 技術基盤センター 主幹研究員
武田 尚 ジャパン マリンユナイテッド株式会社 設計本部 船舶海洋設計部 構造グループ 主査
(現 日本シップヤード株式会社 設計本部 基本設計部 構造グループ 専任課長)
潮海 弘資 JFEテクノリサーチ株式会社 営業本部 営業企画部 営業技監
遠藤 茂 JFEテクノリサーチ株式会社 構造材料ソリューション本部長

3.発明の概要

大型コンテナ船では、建造段階において、溶接施工管理や非破壊検査など、ぜい性き裂(※2)を発生させないための対策に加え、万が一ぜい性き裂が発生した場合でも、船体に大きな損傷を与えない範囲でぜい性き裂の伝播を停止させる二重の安全対策が求められています。本発明は、溶接材料と施工・設計を組み合わせて、ぜい性き裂の伝播を停止させることで、船体の大規模破壊を防止する溶接構造体です(図1)。

近年、コンテナ貨物の海上輸送コストと環境負荷の低減を目的に、コンテナ船の大型化が進んでいます。これに伴い、船体には、より厚く、より高強度な鋼板が使用されるようになっています。鋼板は一般的に、厚さ、強度、または設計応力が増すと、粘り強さが低下する傾向があるため、ぜい性き裂の発生リスクが増大します。このため、ぜい性き裂の伝播を停止させる安全性能の重要性が、これまで以上に高まっていました。

従来は、特別に粘り強さをもたせた特殊な鋼板を、船体上部の構造部材に適用し、ぜい性き裂を構造部材に突入させることで、き裂の伝播を停止させていました。本発明では、①ぜい性き裂が突入する部位を微小なギャップを設けたすみ肉溶接構造とし、②溶接脚長の調整によって溶接金属部へのき裂突入幅を抑制し、③鋼板板厚に応じて溶接金属のじん性を調整することで、ぜい性き裂を溶接金属部で停止させることを可能にしました(図2)。

本発明により、特別に粘り強さをもたせた特殊な鋼板を、船体上部の構造部材に適用することなく、船舶の安全性を確保することができるようになりました。これにより、溶接性に特化した高強度鋼板を構造部材に適用することが可能となり、溶接の高能率化を通じて、建造コストの削減に大きく寄与しています。さらに、従来よりも厚い高強度鋼板の適用が可能となり、船体の大型化による貨物の積載量の増加、および船全体の軽量化を通じた燃費改善にも貢献しています。

なお、本発明は、「2016年度 日本溶接協会 溶接注目発明賞」、「平成30年度 関東地方発明表彰 文部科学大臣賞」を受賞しています。また、本発明を用いて建造された大型コンテナ船は、「第7回ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞」を受賞しています。

当社は今後とも、高機能・高品質な鋼材や鋼材の利用技術の開発を推進し、船舶の経済性および安全性のさらなる向上に努めるとともに、船舶の燃費向上を通じてCO2排出量削減にも寄与していくことで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

(※1)全国発明表彰
公益社団法人発明協会(会長:野間口 有)が主催。我が国の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に、多大な功績をあげた発明・考案・意匠(以下、発明等)や、その優秀性から今後大きな功績を挙げることが期待される発明等を表彰。

(※2)ぜい性き裂
溶接継手の内部などに存在する欠陥が、波から受ける荷重などによって徐々に拡大した場合に、それを起点として発生するき裂。発生したき裂は高速で伝播し、構造物の大規模破壊につながることがある。

 

【写真】

【写真】(左から) 接合・強度研究部 主任研究員 半田 恒久、代表取締役社長 北野 嘉久、ジャパン マリンユナイテッド株式会社 取締役専務執行役員 技術本部長 松本 直士

(左から) 接合・強度研究部 主任研究員 半田 恒久、代表取締役社長 北野 嘉久、ジャパン マリンユナイテッド株式会社 取締役専務執行役員 技術本部長 松本 直士

 

【図1】本発明の適用部位

【図1】本発明の適用部位
 

【図2】本発明の溶接構造(図1(C)位置)

【図2】本発明の溶接構造(図1(C)位置)
本件に関するお問い合わせは、下記にお願い致します。
JFEスチール(株)総務部広報室 TEL 03(3597)3166

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