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ニュースリリース


JFEスチール株式会社

2021年 JFEスチール社長年頭挨拶

代表取締役社長(CEO)北野 嘉久
代表取締役社長(CEO)
北野 嘉久

明けましておめでとうございます。新年にあたり、ご挨拶を申し上げます。

最初に、安全について一言申し上げます。昨年は1件の重大災害が発生し、尊い命が失われました。誠に残念でなりません。ご冥福をお祈りするとともに、「安全はすべてに優先する」の基本理念のもと、再発防止を徹底し安全活動の推進、強化を行っていきます。

昨年3月、当社は、生産体制および製造品種の選択と集中を軸とした構造改革の実施を決断しました。厳しい決断でありますが、当社が生き残り将来にわたって成長していくために必要であると判断したものです。

また、昨年は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、経済活動、社会活動に大きな影響がありました。鋼材需要も大幅に減少し、倉敷4高炉の改修工事前倒し、福山4高炉のバンキングなどの生産調整に加え、補修費削減や緊急労務施策の実施、変動費削減といったコストダウンに繋がる緊急対策を実施するなど、非常に厳しい1年となりました。

コストダウン目標は達成できる見込みですが、2020年度の年間の鉄鋼事業のセグメント利益は大幅な赤字となる見通しです。自動車業界など一部の需要分野においては回復傾向が見られるものの、今後の新型コロナウイルスが世界経済に与える影響は未だ見通しきれないことから、経済活動の回復スピードもある程度緩やかなものになると想定せざるを得ず、厳しい経営環境が継続するものと考えています。

JFEスチールの目指す姿と課題

2021年は引き続き厳しい状況が想定されますが、JFEスチールが目指す「常に新たな価値を創造し、お客様とともに成長するグローバル鉄鋼サプライヤーになる」という長期ビジョンに変わりはありません。

これを実現するには、構造改革を全社課題として着実に推し進め、スリムかつ強靭で競争力のある会社への変革を果たすとともに、海外の収益基盤強化を推進することが重要であり、これらが今後の成長の柱になると考えています。

一方、当社はJFEグループ発足後最大の危機的状況を迎えており、全力でこの難局を乗り越えていく必要があります。この状況からいち早く脱却するには、2020年度下期および2021年度のセグメント利益黒字化を実現することが喫緊の課題です。

また、地球規模の気候変動問題の解決に向けて、当社をはじめ日本鉄鋼業は、世界最高水準のエネルギー効率による製造技術、高機能製品による自動車の軽量化・燃費効率向上などによりCO2排出量削減に貢献してきました。今後さらに対応を進め、業界のみならず個社としても目標を掲げ取り組みを強化することが必要と考えています。

2021年の重点課題

このような中、皆さんに重点的に取り組んでいただきたい課題は次のとおりです。

第一は、安全活動の推進です。安全は企業活動の基盤であり、経営課題として取り組んでいく必要があります。「安全成績の向上なくして、企業価値の向上なし」の認識のもと、すべての事業所が業界トップレベルの実力をつけ、「安全はすべてに優先する」の基本理念が常に実践される基盤強化を行ってください。

第二に、黒字化の達成です。現在の危機的状況にあって取り組むべきは、2020年度下期および2021年度のセグメント利益を黒字化することです。構造改革を着実に推進する中で、直協一体となった労働生産性の向上を図りながら、国内の製鉄所・製造所の競争力を強化し、スリムかつ強靭で競争力のある会社への変革を目指し取り組みを進めます。製造現場においては、高付加価値商品の製造が拡大している中ではありますが、原点に回帰して各プロセスにおける歩留の向上に向けた地道な活動を進めることも重要です。販売活動においては、製品の付加価値に見合った販売価格の改善活動を粘り強く進め、迅速に成果を出すよう努めてください。

第三に、海外事業における成長戦略についてです。国内の鉄鋼需要が下降傾向となる中、海外の成長を取り込むことが必要です。海外の成長市場で価値観を共有できるパートナーとともにビジネスを創出し、その企業の価値向上を当社の成長に繋げるとともに、長年にわたり当社に蓄積された知識や技術、技能、データと最先端のAI・IoTを組み合わせた鉄鋼技術のソリューションを海外の会社に提供するビジネスを収益の柱として育てていきたいと考えています。

第四に、AI、IoTをはじめとするDX(デジタルトランスフォーメーション)技術の活用です。各設備へのセンサー導入と最新モデル化技術による操業状況の見える化などを進め、将来的には全ラインのCPS(サイバーフィジカルシステム)化による設備安定化への取り組みを進めます。その一方で、データサイエンティストの育成など、蓄積したデータ資産を活用できる人材の育成も進めていきます。今後、技術継承や人材育成、設備の老朽化対策、労働生産性の向上、安全・防災・環境、品質管理など、さまざまな分野や課題への対応において活用していきたいと考えています。従来の業務の延長として活用するだけでなく、ITやAIを積極活用して仕事のやり方そのものの改革にも挑戦してください。

中長期的な課題への取り組み

現在、中期的に取り組むべき課題と今後の経営目標のあり方を役員間で討議しているところであり、これらを固め次第、社員の皆さんに発信したいと考えていますが、国内の製鉄所・製造所の競争力を揺るぎのないものにまで強化するとともに、海外の成長を取り込むことができるビジネス展開を図るという二つの柱は中長期的に見ても不変の課題と考えています。これらの課題解決と今後の成長のためには将来を見据えたデジタル活用、グリーン社会実現への対応が鍵になると考えています。

グリーン社会の実現は、世界が持続的に発展していくためには不可欠であり、当社にとっても取り組むべき課題であるとともに成長の機会でもあります。まず、グリーン社会実現への対応として、地球環境の保全への取り組みにもさらに注力していきます。その一つとして、CO2排出量削減へのさらなる取り組みとして、昨年、当社は個社として2030年度のCO2排出量について2013年度比で20%以上削減を目指すことを決定し、公表しました。新たに立ち上げたプロジェクトチームを中心に、この目標達成のため、あらゆる施策を検討・実行していきます。現状の製造プロセスを前提とした削減策に加え、2050年以降のカーボンニュートラルを目指して、長期的な技術開発も推進し、気候変動問題の解決に貢献していきます。

また、電動自動車や洋上風力発電など、グリーン社会実現に貢献が期待される分野に対して素材メーカーとして貢献するとともに、これらを今後の成長の柱とすべく取り組みます。

2021年の行動指針

これらの課題に取り組むにあたり、まず足元の危機的状況を全員が認識し、各人がそれぞれの立場で何ができるかを真剣に考えてください。その上で、次の点を心掛けて行動してほしいと思います。

一つ目は、新しいことに挑戦する気持ち、姿勢を持ち続けてほしいということです。成長していくためには「挑戦」が不可欠です。ルーティーンワークの中にも必ず新たな発見があるはずで、どうすれば今よりも良くなるかを考えて仕事に臨んでください。また、新しいことに挑戦する際には失敗を恐れないことが重要です。部下がいる人であれば、部下にも挑戦を促し、失敗しても怒ったり責めたりせず、挑戦したこと自体を褒めるマネジメントを継続していくことが必要です。会社が厳しい状況にあるからこそ、社員が生き生きと新しいことに挑戦する活力ある会社にしていかねばらないと考えています。

二つ目は、自ら考え、自ら語り、自ら行動しようということです。自身の想いや理想を実現していくために、自分の頭で何をしたいか考え抜き、それを相手に伝えるためのコミュニケーション力を磨き、さらにそれを具現化するための行動力・実行力を持ってほしいと思います。そのためには、若手社員の積極的なアウトプットが不可欠です。各人それぞれの置かれた立場や持ち場で、なすべきことを自ら考え、行動に移すことを心掛けてください。

また、当社が家族や社内外に誇れる会社になるには、社員全員が健康で生き生きと働ける安全な職場づくりが不可欠です。安全活動は、各事業所・地区の所長がリーダーシップを取って地区ごとに推進管理し、監督者は毎日現場に出て、現場の生産・保全活動を掌握し改善活動を行い、不十分な場合は作業者とのコミュニケーションをしっかりとって改善してください。さらに、過去に発生した事故・災害を振り返り、類似災害防止活動にも力を入れることが重要です。作業者の皆さんは「凡事徹底」を心掛け、真に「自主自立」した職場づくりを実現してください。

また、企業活動は社会からの信頼のもとに成り立っています。ひとつのコンプライアンス違反がものづくりに対する信頼の根幹を揺るがし、企業そのものの存続を脅かす事態になりかねないということを肝に銘じ、今一度、気を引き締め直してほしいと思います。

結び

最後に、労働組合の皆さんに一言申し上げます。かつてないほどの厳しい経営環境下で、さまざまな経営課題に対応していくためには、これまでにもまして労働組合の皆さんのご理解とご協力が不可欠です。労使で十分に意思疎通を図り、この難局を乗り切っていきたいと思っています。引き続き、よろしくお願いいたします。

以上、年頭にあたり所信を申し述べました。本年が皆さんとご家族にとって実り多く健康で幸せな一年となりますよう心から祈念し、新年の挨拶といたします。