ニュースリリース
JFEスチール株式会社
全国発明表彰を7年連続で受賞
~漏洩磁束法による鋼板の微小凹凸欠陥計測装置『T-eye®』~
この度、当社の開発した微小凹凸欠陥計測装置『T-eye®』が、令和2年度全国発明表彰(※)発明協会会長賞を受賞しました。当社の全国発明表彰受賞は7年連続で、JFEスチール発足以来11回目となります。
1.受賞件名:
「漏洩磁束法による鋼板の微小凹凸欠陥計測装置の発明」
2.受賞者:
腰原 敬弘 | スチール研究所 | 研究企画部 主任部員 |
加藤 宏晴 | JFEアドバンテック株式会社 | 海洋・河川事業部 技術部長 |
長棟 章生 | 元 JFEスチール株式会社 スチール研究所 | 主席研究員 |
3.発明の概要:
本発明は、鋼板の微小凹凸欠陥の自動検出技術に関するものです。この欠陥は、鋼板の表面粗さと同等の数μmの凹凸であるため、鋼板のままでは見えません。しかし、自動車用に加工・塗装が施されて表面が滑らかになると、欠陥が顕在化して問題となるため、鋼板製造時には検査が必要とされています。従来は、製造ラインを停止し、鋼板表面を平滑にするための砥石がけを行った後に、目視検査を実施していました。この砥石がけ検査は、生産性を阻害するだけではなく、欠陥の発見を熟練技術者の感覚に依存するため、鉄鋼各社にとって検査の自動化が大きな課題となっていました。
本発明では、製造ラインのロールに付着した異物が転写して欠陥が発生するというメカニズムに着目し、欠陥部には歪(ひずみ)が生じていると考えました。この歪に対応した物理量は、鋼板の磁気特性であることを突き止め、漏洩磁束法により微小凹凸欠陥の自動検出に成功しました(図1・2参照)。
本発明により、これまで人手に頼っていた鋼板の微小凹凸欠陥検査を自動化することで、自動車用途等の高品質鋼板の生産性向上を実現しました。さらに、熟練技術者の感覚に頼っていた砥石がけ検査を省略することで、世代交代で若年層が多くなった現場でも、確実な鋼板の品質保証が可能となりました。これらを通じて、高品質鋼板の安定製造に大きく貢献しています。
なお、本発明の自動検出技術は、2015年3月「日本鉄鋼協会 計測・制御・システム技術賞」、2017年10月「中国地方発明表彰 文部科学大臣賞」、2019年2月「機械振興協会 機械振興協会会長賞」を受賞しております。
当社は今後とも、積極的な技術開発と設備投資を積み重ね、高品質な薄鋼板の安定供給を可能とする製造プロセスの確立に努めることで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
※『T-eye®』はJFEスチール(株)の登録商標です。
(※)全国発明表彰
公益社団法人発明協会(会長:野間口 有)が主催。我が国の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に、独創性に富む優れた発明を完成した者、発明の実施化及び指導、奨励、育成に貢献した者を表彰。
【図1】漏洩磁束法による鋼板微小凹凸表面探傷装置
【図2】微小凹凸欠陥検出例