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JFEスチール株式会社

第66回(令和元年度)大河内記念賞を受賞
~超大型コンテナ船用極厚高アレスト鋼板「ARRESTEX」~

このたび、当社の開発した超大型コンテナ船用極厚高アレスト鋼板「ARRESTEX」が、(公財)大河内記念会(理事長:吉川弘之 国立研究開発法人科学技術振興機構特別顧問)より、第66回(令和元年度)大河内記念賞を受賞しました。

大河内記念賞は、生産工学上優れた独創的研究成果をあげ、学術の進歩と産業の発展に多大な貢献をした業績に与えられるもので、大河内賞の中で最上位に位置付けられています。鉄鋼業界からの記念賞受賞は、平成22年度の弊社での受賞以来9年ぶりです。贈賞式は、3月24日に日本工業倶楽部会館(東京・丸の内)にて行われます。

 

1.受賞件名
「超大型コンテナ船の脆性き裂伝播を抑止する集合組織制御型極厚鋼板の開発」

 

2. 受賞者

植田 圭治 スチール研究所 鋼材研究部 主任研究員
長谷 和邦 技術企画部 主任部員
竹内 佳子 スチール研究所 鋼材研究部 主任研究員
半田 恒久 スチール研究所 接合・強度研究部 主任研究員
衞藤 太紀 西日本製鉄所(福山地区) 厚板部厚板工場 工場長
 

3.開発の概要:
このたび受賞した「ARRESTEX」は、超大型コンテナ船に適用可能な高強度極厚高アレスト鋼(※1)です。コンテナ船は、コンテナを数多く積載するため、デッキ上部に大きな開口部を有する特徴的な構造の船です。海上を航行する際、船体に大きな波の荷重を受けるため、デッキ上部やハッチコーミングと呼ばれる船体側面には、極厚かつ高強度の鋼材を使用する必要があります。近年、輸送効率の向上を目的に、コンテナの積載量が20,000個を超える超大型コンテナ船が登場しており、それに合わせて鋼板は板厚が50mmから100mmまで拡大し、降伏強度で460MPa級までの高強度化が求められるようになりました。

一方、鋼材の板厚が厚くなるほど、脆性き裂の進展を停止するために必要なアレスト性能がより高くなります。国際船級協会連合(※2)は、急速に大型化する船体の安全性確保のため、2019年12月、構造上の安全確保とともに、ハッチサイドコーミングに使用される板厚80mm~100mmの鋼材において、アレスト靭性値(Kca)8,000N/mm3/2以上の性能を義務付けました。

これに対し当社は、加熱温度や圧延温度を精緻に制御するTMCP技術(※3)を活用し、鋼板の板厚中央部にき裂の伝播に抵抗する向きの結晶比率を高める独自の技術(図1)を確立し、世界最高厚となる100mmの極厚高強度鋼板においても、高アレスト性能の確保が可能になりました。これにより、さらなるコンテナ船大型化の実現に寄与することができます。

また、今回開発した鋼板の量産にあたっては、工業的に利用可能な簡易かつ経済的な出荷判定試験法により安全性を保証する技術も併せて必要になります。そこで、開発鋼の材料設計思想に適合した経済的なアレスト性簡易保証技術を確立し、開発鋼の大量生産が可能になりました。

今後とも当社は、高機能・高品位な鋼材の供給を通じ、船舶のさらなる経済性、安全性と信頼性向上に努めるとともに、地球環境の保全に貢献するなど、多様化するお客様のニーズに応えてまいります。

(※1)高アレスト鋼:溶接部に万が一発生した脆性き裂の伝播を止め、船体の損傷被害を最小限にとどめる性能に優れた鋼板。(図1参照)

(※2)国際船級協会連合:船舶の検査機関である船級協会の集まりで、1968年に創設された。日本海事協会を含む、世界の主要12船級協会で構成されている。

(※3)TMCP技術:Thermo-mechanical Control Process(熱加工制御)のこと。制御圧延、加速冷却を駆使して、オンライン製造で鋼材の強度や靭性を向上させる技術。

 

【図1】結晶の方位制御によるき裂伝播抑制

【図1】結晶の方位制御によるき裂伝播抑制

本件に関するお問い合わせは、下記にお願い致します。
JFEスチール(株) 総務部広報室 TEL 03 (3597) 3166

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