ニュースリリース
JFEスチール株式会社
「第8回ものづくり日本大賞」内閣総理大臣賞を受賞
~電気機器の省エネに貢献する高機能電磁鋼板の開発~
このたび、第8回ものづくり日本大賞の製品・技術開発部門にて、当社の高機能電磁鋼板の開発(受賞件名:「電気機器の省エネに貢献する省資源型Si傾斜磁性材料の開発」)が内閣総理大臣賞を受賞しました。内閣総理大臣賞は、各部門における最高位の賞です。当社はものづくり日本大賞をこれまで8件受賞しており、内閣総理大臣賞は2件を受賞した前回(第7回)に続き、2回連続3件目です。1月8日、総理大臣官邸において表彰式が開催されました。
ものづくり日本大賞は、日本の産業・文化の発展を支え、豊かな国民生活の形成に大きく貢献してきたものづくりを着実に継承し、さらに発展させていくため、製造・生産現場の中核を担っている中堅人材など、ものづくりの第一線で活躍する各世代のうち、特に優秀と認められる人材などを顕彰する制度です。特に、昨今日本の製造業が直面している様々な事業環境の変化に柔軟に対応し、新たな付加価値を提供する人材にスポットライトを当て、広く発信していくことを目的とし、それによって、ものづくりに携わる全ての人材の意欲向上、ひいては日本の製造業が今後も力強く成長していくための原動力となることを期待するものです。 製品・技術開発部門は、高度な技術的課題を克服し、優れて画期的な製品若しくは部品や素材等の開発・実用化を実現させた個人又はグループを表彰するものです。
受賞内容は、下記の通り。
1. 受賞件名
「電気機器の省エネに貢献する省資源型Si傾斜磁性材料の開発」
2. 受賞者
JFEスチール(株) | スチール研究所 電磁鋼板研究部 | 尾田善彦 |
JFEスチール(株) | スチール研究所 機能材料研究部 | 平谷多津彦 |
JFEスチール(株) | スチール研究所 サイバーフィジカルシステム研究開発部 | 浪川操 |
JFEスチール(株) | 東日本製鉄所(京浜地区)商品技術部 | 笠井勝司 |
JFEスチール(株) | 西日本製鉄所(倉敷地区)薄板商品技術部 | 日裏昭 |
JFEスチール(株) | 電磁鋼板営業部 | 山路常弘 |
JFEスチール(株) | 東日本製鉄所(京浜地区)冷延部 | 戸部輝彦 |
3. 受賞概要
電磁鋼板(※1)はモータや変圧器等の電気機器の鉄心材料として広く用いられており、電気機器の性能を左右するキーマテリアルです。近年、機器小型化の観点から駆動周波数の高周波化が進展しており、電磁鋼板には高周波域での鉄損(※2)の低い材料が求められるようになっています。高周波域での鉄損を低減するためには、電気抵抗増加元素である珪素(以下、Si)濃度アップが有効ですが、同時に飽和磁束密度の低下を招くという課題がありました。
当社は、この課題を克服するために、独自開発したCVD(化学気相蒸着)連続浸珪プロセス技術を用い、表層部のSi濃度分布を高く、板厚中心部のSi濃度を低くした板厚方向のSi濃度分布コントロールにより高周波鉄損を低減した『JNHFコア®』を開発しました。さらに、浸珪処理前の母材成分適正化に取り組み、浸珪処理中にSiの拡散速度が遅いオーステナイト相(γ相)となる成分とすることにより、鋼板の表層部にSiを局在化させた『JNSFコア®』を開発し、一層の高周波鉄損低減に成功しました。
開発鋼は、高周波鉄損が低くかつ飽和磁束密度が高いことから電気機器の高効率化、小型化に大きく貢献しています。主に太陽光発電用リアクトルの鉄心材料として広く使用されており、今後はモータ分野への適用が期待されています。
なお、開発技術は、平成26年度「日本金属学会表彰 技術開発賞」、平成28年度「中国地方発明表彰 文部科学大臣賞」、平成28年度「市村産業賞 貢献賞」、令和元年度「全国発明表彰 発明協会会長賞」を受賞しています。
当社は今後も高機能・高品位な電磁鋼板の開発を通じ、電気機器の高効率化、小型化に貢献するとともに、多様化するお客様のニーズにお応えできるよう最先端の技術革新、商品開発に注力してまいります。
※『JNHFコア®』、『JNSFコア®』はJFEスチール(株)の登録商標です。
【写真】表彰式にて(左より、浪川氏、日裏氏、平谷氏、尾田氏、安倍内閣総理大臣、梶山経済産業大臣、山路氏、戸部氏、笠井氏)
【図】CVD連続浸珪プロセスと開発鋼の板厚方向のSi分布
(※1)電磁鋼板
鉄にSiを添加した材料であり、モータ、変圧器等の鉄心材料として広く用いられており、絶縁被膜を表面に塗布した薄鋼板が積層されて使用される。別名、珪素鋼板。
(※2)鉄損
鉄心を交流で励磁した際に生じる損失。主に熱として失われる。鉄損が低いほど電気機器は高効率となる。