ニュースリリース
JFEスチール株式会社
タンカー底板向け高耐食厚鋼板『JFE-SIP®-OT1』累計製造10,000t超え
当社が開発したタンカー原油油槽の過酷な腐食環境に耐えうる高耐食厚鋼板(商品名:『JFE-SIP®-OT1』(※1))が、2008年の初採用以来、累計製造が10,000tを超えました。
タンカーの貨物油タンク内底板は、原油に含まれる海水により激しい孔食(※2)を生じます。構造強度低下をもたらす懸念があることから、耐食性向上が求められており、特に2010年国際海事機関(IMO)の性能基準が制定されて以降、新たに建造するタンカーにおいては、防食措置が強制化されています。防食措置の方法としては、塗装するほか、今回のような耐食鋼を使用する方法が定められています。
当社は、2003年から商船三井株式会社との調査研究を経て、耐食元素を組み合わせることで、タンクの底板の孔食を抑制する耐食鋼:『JFE-SIP®-OT1』を2006年に開発しました。2008年にVLCC(超大型原油タンカー)に適用して以降、航行する実船を10年以上継続評価し、孔食が著しく抑制されていることを確認しています。 本鋼板は、一般財団法人日本海事協会(所在地:東京都千代田区、会長:上田徳)より「KA32-RCB」、「KD32-RCB」、「KA36-RCB」、「KD36-RCB」の船級規格において、業界最高の板厚40mm、Z35(※3)の承認を得ています。これらの良好な耐食性や適用範囲の広さが評価され、このたび初採用以降の累計製造が10,000tを超えました。
本鋼板の適用によって、タンク底板の孔食の大幅な抑制が可能になります。また、初期の無塗装化が可能となり、維持管理時を含めた塗装コストが大幅に低減されます。さらに、塗装作業による工場からの揮発性有機化合物(VOC)の排出量の低減にも繋がります。
当社は今後とも、高機能・高品質な鋼材の供給を通じて、船舶の更なる安全性、経済性、信頼性向上に努めるとともに、地球環境の保全に貢献し、お客様や社会の多様なニーズに積極的に応えてまいります。
(※1)JFE-SIP®-OT1 :JFE Steel for Ship Inside Protection for Oil Tankerの略。
(※2)孔食:局部的に孔が開いたように進行する腐食
(※3)Z35:板厚方向の引張試験における絞り値を35%以上に保証し、剥離性を抑制した鋼材
【図1】底板の腐食環境
【図2】JFE-SIP®-OT1の耐食機構
【図3】実船原油タンク底板での孔食発生数
【写真】開発鋼適用船例