ニュースリリース
JFEスチール株式会社
株式会社セイケイ
建築構造用高性能590N/mm2級TMCP鋼材『HBL®440』および
建築構造用590N/mm2級冷間プレス成形角形鋼管『G440』の大臣認定取得
JFEスチール株式会社(以下「JFEスチール」)は、TMCP技術(*1)を活用した、中厚領域(板厚19~50mm)での建築構造用高性能590N/mm2級TMCP鋼材『HBL®440』(表1参照)を開発し、国土交通大臣の認定(*2)を取得しました。主な用途は溶接組立H形鋼梁および冷間成形角形鋼管柱です。また、JFEスチールと株式会社セイケイ(以下「セイケイ」)は共同で『HBL®440』を原板とした建築構造用590N/mm2級冷間プレス成形角形鋼管『G440』(表1参照)を開発し、国土交通大臣の認定を取得しました。
現在、高層建築物などに広く適用されている建築構造用高性能590N/mm2級鋼材である「SA440」は、高強度と低降伏比を両立させるために多段熱処理工程が必要でしたが、今回開発した『HBL®440』は、JFEスチールのナンバーワン先端技術であるオンライン加速冷却装置『Super-OLACTM』を活用することで、多段熱処理工程を省略し納期短縮を実現しました(図1参照)。また、『HBL®440』を原板に採用した『G440』についても同様に、熱処理鋼板を使用した従来の590N/mm2級冷間プレス成形角形鋼管「PBCP440」と比較して、納期短縮を実現しました。
加えて、従来、「SA440」および「PBCP440」では、溶接部の品質確保のため、溶接法に応じた予熱条件が定められており、お客様より溶接性改善についての要望がありましたが、今回開発した『HBL®440』および『G440』では、TMCP技術の適用により溶接割れ感受性組成(*3)を低く抑えることで、溶接施工における工数及び管理に手間のかかる予熱条件が緩和されました(表2-1,2-2参照)。また、『G440』においては、溶接施工データを蓄積し、溶接入熱とパス間温度の適正化を図ることにより入熱制限値が緩和され、ロボット溶接の施工性が大きく改善されています(表2-2参照)。
JFEスチールおよびセイケイは、今後高層ビルや大規模建築物等への『HBL®440』ならびに『G440』の採用を目指してまいります。また、両社は今後ともお客様のご要望に幅広くお応えすべく、付加価値の高い建築建材商品の開発に努めてまいります。
(*1) | TMCP : Thermo-Mechanical Control Process(熱加工制御)を鋼材に施す技術で、鋼材の強度や靱性の向上を狙いとして開発された。 |
(*2) | 国土交通大臣認定 : 建築基準法第37条に基づく国土交通大臣認定。建築基準法で指定されているJIS材以外の鋼材(高強度鋼等)の使用にあたっては国土交通大臣認定の取得が必要。 |
(*3) | 溶接割れ感受性組成(PCM) : 溶接時の低温割れに対する感度の指標で鋼の化学成分を元に算定される。PCMが高いほど低温割れに対する感度が高くなる傾向がある。 |
【図1】HBL®440の製造プロセス概念図

【表1】HBL®440およびG440の規格概要
■化学成分 単位:重量%
|
(※)板厚40mm超は0.47以下
■機械特性
品種 | 種類の 記号 |
板厚 mm |
降伏点 又は耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
降伏比 % |
伸び | シャルピー吸収 エネルギー J |
厚さ方向 特性(絞り) % |
||
厚さ mm |
試験片 | 伸び % |
||||||||
厚板 | HBL440B | 19≦t≦50 | 440以上 540以下 |
590以上 740以下 |
80 以下 |
19≦t ≦32 32< t≦40 20< t ≦50 |
1A号 1A号 4号 |
15以上 16以上 20以上 |
試験温度0℃ 47以上 |
![]() |
HBL440C | (平均)25以上 (個値)15以上 |
|||||||||
冷間プレス 成形角形 鋼管 |
G440B | 19≦t≦50 | 440以上 540以下 |
590以上 740以下 |
80 以下 |
19≦t ≦32 32< t≦40 20< t ≦50 |
1A号 1A号 4号 |
15以上 16以上 20以上 |
試験温度-40℃ 47以上 |
![]() |
G440C | (平均)25以上 (個値)15以上 |
■寸法形状
品種 | 種類の 記号 |
辺の長さ |
適用板厚範囲 |
冷間プレス成形角 形鋼管 |
G440 | 350mm以上 1400mm以下 |
19mm以上 50mm以下 |
【表2.1】HBL®440の溶接条件概要(ガスシールドアーク溶接の例)
従来品SA440 |
新商品 HBL®440 |
||
製造法 | 二相域(多段)熱処理 |
TMCP 納期短縮 |
|
化学
成分 |
C上限値 | 0.18% |
0.12% |
PCM上限値 | 0.28% |
0.22% |
|
溶接 条件 |
予熱 | 60℃以上 |
予熱なし 溶接条件緩和 |
【表2.2】G440の溶接条件概要(ガスシールドアーク溶接の例)
従来品SA440プレスコラム
(商品名:PBCP440) |
新商品 G440 |
||
原板の製造法 | 二相域(多段)熱処理 |
TMCP 納期短縮 |
|
化学
成分 |
C上限値 | 0.18% |
0.12% |
PCM上限値 | 0.28% |
0.22% |
|
溶接 条件 |
予熱 | 55℃以上 |
予熱なし(※) 溶接条件の緩和 |
その他 | ロボット溶接の標準入熱条件で
適用不可 |
ロボット溶接の標準入熱条件で 適用可能 |
(※)690N/mm2級などの高強度のソリッドワイヤでは、予熱が必要となります。