変圧器や配電盤、高圧ケーブルなどの受変電設備では、長期間の運用により推奨更新時期を迎える設備が増えています。一方で、設備停止を伴う工事や投資計画との兼ね合いから、更新時期を迎えた後も継続して使用されているケースがあるのが実情です。
もし受変電設備で異常が発生してしまうと、その影響は設備単体には留まらず、操業そのものへ影響する可能性があります。
こうした背景から、設備状態を継続的に把握し、異常の兆候を早期に検知することは喫緊の課題だといえます。
本記事では、そんな受変電設備の老朽化が進む背景や突発停電リスクを整理したうえで、絶縁劣化の早期兆候である部分放電に着目し、部分放電解析による常時監視と予知保全の考え方について解説します。
日本では「受変電設備の老朽化」「人材不足」が同時に進行
受変電設備を構成する変圧器や高圧ケーブルには更新推奨時期があります。これは、メーカーが想定する耐用年数や保守実績などをもとに設定された目安であり、設備更新を検討する一つの基準となります。
そんな設備更新には工事費用だけでなく、設備停止期間の確保や生産計画との調整も必要です。そのため、更新時期を迎えた設備であっても、定期的な点検をしながら継続運用している工場は多く存在します。
特に24時間操業の工場や計画停止が難しい製造現場では、設備を停止して更新すること自体が大きな判断となります。
つまり、設備更新を進める一方で、既存設備の状態を定量的に評価することが難しいため、目視を中心とした定期的な点検を行い、安定操業を維持することが求められるのです。
また、設備の老朽化と並行して、電気主任技術者をはじめとする保全人材の高齢化や不足も進んでいます。設備診断や異常判断に関する知見が特定の担当者へ集中しているケースもあり、技術継承や保全品質の維持が課題となっています。
このように、受変電設備の保全では「設備の老朽化」と「人材不足」が同時に進行しており、限られた人員で多くの設備を管理しなければならない状況です。
そもそも受変電設備は工場全体へ電力を供給する設備となります。
そのため、変圧器や配電盤、高圧ケーブルなどで異常が発生した場合、生産設備そのものに問題がなくても、製造ラインが停止するリスクが常に付随しています。
突発停電が発生すると「設備の復旧」だけでなく「生産設備の再立ち上げ」「品質確認」「納期調整」などの対応も必要です。工程によっては、仕掛品の廃棄や製品品質への影響が発生するでしょう。
特に連続操業を前提とする製造現場では、設備停止そのものが生産計画へ影響します。それを踏まえると、設備が停止してから原因を調査するのではなく、異常の兆候を事前に把握し、計画的な保全につなげる考え方が必要といえます。
受変電設備の故障要因の一つが絶縁劣化です。絶縁劣化とは、本来は電気を通さない絶縁物の性能が低下し、漏電や短絡(ショート)が発生しやすくなる状態を指します。
絶縁劣化は設備内部で進行するため、外観点検だけで状態を把握できるとは限りません。
さらに、劣化の初期段階では温度や音に変化が現れない場合もあります。つまり、点検時には異常が確認されなくても、その後の運転中に劣化が進行していくこともあるのです。
こうした絶縁劣化の初期兆候として知られているのが部分放電となります。部分放電は絶縁体の一部で発生する微弱な放電現象ですが、常時発生しているわけではなく、発生と消滅を繰り返す性質を持ちます。
この性質から、点検のタイミングによっては部分放電を捉えられないことがあり、点検時に異常が確認されなかったとしても、設備内部で劣化が進行している可能性を否定することはできないのが実情です。
設備の劣化は段階的に進行するため、下図のように、重大なトラブルが発生する前には何らかの変化や兆候が現れる場合があります。
従来の時間基準保全では、決められた周期で設備の状態を確認してきました。
一方で、劣化そのものは点検周期とは関係なく進行します。部分放電のように一時的に現れる兆候もあるため、点検時の状態だけで設備全体の健全性を判断することは容易ではありません。
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こういった課題に対処するためには、設備状態を継続的に把握し、劣化の進行を時間軸で捉えていかなければなりません。
その上で有効なアプローチの一つが、「部分放電解析による常時監視」です。
部分放電は絶縁劣化の初期段階で発生するため、その発生状況を継続的に監視することで、設備内部で進行している異常の兆候を把握できます。
従来の定期点検では、点検時点における設備状態を確認することが中心でした。一方、常時監視では運転中の設備状態を継続的に記録できるため、部分放電の発生傾向や変化を時系列で把握できます。
部分放電信号を解析することで、異常の有無だけでなく、劣化の進行状況を継続的に確認することも可能です。
設備停止や故障が発生してから対応するのではなく、修繕や更新のタイミングを事前に検討しやすくなります。
部分放電解析は設備の異常を検知するための手段というだけではありません。設備状態を継続的に把握し、保全計画の判断材料として活用できます。
JFEでは、製鉄所のように24時間365日の連続操業が求められる環境で、多数の受変電設備を運用してきました。
広大な敷地に設備が分散し、停止による生産影響も大きいため、変電設備の異常を早期に捉えることは、安定操業を支える最重要課題の一つです。
そこで当社では、部分放電信号をオンラインで取得し、常時監視とデータ解析によって劣化兆候を可視化する取り組みを進めています。ノイズと異常信号を識別し、放電原因の推定や劣化進展の把握につなげることで、故障に至る前の計画的な保全判断を支援する仕組みです。
受変電設備の保全では、設備の異常が顕在化してから対応するのではなく、故障に至る前の変化をいかに把握するかがポイントになります。
そのため、設備の健全性を点検時だけで判断するのではなく、
設備状態を継続的に監視しながら保全判断を行う予知保全の考え方が、今後重要になってくるのです。
JFEでは、自社の製鉄所で培った保全ノウハウをもとに、
部分放電信号を活用した変電設備向けスマート保全技術の開発・運用に取り組んでいます。その過程で得られた知見やノウハウをまとめた資料を公開しています。
受変電設備の保全体制を見直したい方や、設備状態に応じた保全判断を検討している方は、ぜひ資料をご覧ください。