ニュースリリース
JFEスチール株式会社
ニッケルフリー合金鋼粉『FM1000S』を新開発
~高強度と高靱性を兼ね備えた粉末冶金用途向け鉄粉~
当社はこのたび、1000MPa級の高強度と、ニッケル(以下、「Ni」)含有合金鋼粉と同等の高靱性を備え、被削性にも優れた粉末冶金(※1)用途向けのNiフリー合金鋼粉『FM1000S』を新たに開発しました。
従来、高強度かつ高靱性の焼結部品には、Niが4%、銅(以下、「Cu」)が1.5%、モリブデン(以下、「Mo」)が0.5%含まれる、4%Ni合金鋼粉が使用されていました。これは、Ni、CuおよびMo添加により強度が、Ni添加により靱性が高まるためです。しかし、特にNiの原料価格上昇に伴う、コスト上昇が課題でした。
すでに当社では、1000MPa級の高強度でNiフリーの合金鋼粉『FM1000』(※2)を商品化していますが、靱性が4%Ni合金鋼粉より低いという課題がありました。そこで、『FM1000S』は粒子形状を不定形化し、更に粒子表層にMoを濃化する(図1)ことで、お客様での部品製造時に焼結を促進させ、焼結部品の組織中にある空孔を微細化(図2)させました。それにより、強度と靭性が向上し、Niを添加することなく、4%Ni合金鋼粉と同等以上の高強度と高靱性を実現しました。また、FMシリーズの特徴のひとつでもある高い被削性も備えています。これによりNi添加が不要となり、『FM1000S』は4%Ni合金鋼粉に比べて大幅なコストダウンが可能になります。スプロケット(※3)など、自動車のエンジン・トランスミッション部品への適用を目指します。
当社は国内唯一の総合鉄粉メーカーとして、還元鉄粉(※4)、アトマイズ鉄粉(※5)および合金鋼粉を製造しております。当社は今後も、鉄粉の新たな需要分野の開拓、普及を図るとともに、さらなる高品質、高機能な商品開発に注力し、お客様の利便性の向上に努めてまいります。
(※1)粉末冶金:鉄粉を金型に入れて圧縮し固め、焼結して、複雑形状でかつ精度の高い部品を作る技術。
(※2)『FM1000』:Niフリーで、かつお客様での焼結・熱処理を行った後に1000MPa級以上の強度を有する焼結体が得られる合金鋼粉。
(※3)スプロケット:チェーンと組み合わせて動力を伝達する歯車形状部品。
(※4)還元鉄粉:圧延工程で発生するミルスケールを還元し、製造する鉄粉。
(※5)アトマイズ鉄粉:水アトマイズ法(高圧水で金属溶湯を冷却し、粉化する方法)で製造する鉄粉。
【図1】粒子構造
![]() 4%Ni合金鋼粉 |
![]() FM1000S |
【図2】焼結部品の組織中にある空孔
![]() 4%Ni合金鋼粉 |
![]() FM1000S |
【図3】焼結・熱処理部品の強度と空孔径の関係
![]() 平均空孔径(µm) |
![]() 平均空孔径(µm) |