ニュースリリース
JFEスチール株式会社
ケミカルタンカー用ステンレスクラッド鋼板を新開発
当社はこのたび、ケミカルタンカーのカーゴタンクに使用可能な、二相ステンレス鋼「SUS329J3L」を合せ材とする「TMCP型SUS329J3Lステンレスクラッド鋼板」を開発し、(一財)日本海事協会より製造法承認を取得しました。
ケミカルタンカーは、液体の化学薬品などを運搬する船舶です。特にその中でも、カーゴタンクは極めて過酷な腐食環境にあり、また高比重の積荷や波浪など、厳しい荷重条件に耐える必要があるため、耐食性に優れ、かつ高強度のステンレス鋼板やステンレスクラッド鋼板(※1)が主に使用されています。
合せ材のステンレス鋼「SUS329J3L」は、固溶化熱処理(※2)後の状態において、従来からケミカルタンカーで使用されている合せ材「SUS316L」より、耐孔食性や耐応力腐食割れ性など、耐食性に優れています。しかし、熱間圧延時に、耐食性を劣化させる有害な析出物が生成しやすいという課題がありました。そこで、圧延時にTMCP技術(※3)を適用することで、有害な析出物の生成を抑制し、優れた耐食性と機械的特性を両立させることで、「TMCP型SUS329J3Lステンレスクラッド鋼板」の開発を実現させました。
今回開発した「TMCP型SUS329J3Lステンレスクラッド鋼板」は、日本海事協会の製造法承認を取得しており、今後ケミカルタンカーへの実船適用を目指します。
当社は今後とも、高機能・高品質な鋼材の供給を通じて、船舶のさらなる経済性、安全性、信頼性向上に努めるとともに、地球環境の保全に貢献し、お客様や社会の多様なニーズに積極的に応えてまいります。
(※1)ステンレスクラッド鋼:ある金属を他の金属で全面にわたり被覆し、かつ境界面が金属組織的に接合しているものをクラッドと言うが、その中でも被覆される金属が鋼で、被覆する金属がステンレス鋼のもの。
(※2)固溶化熱処理:析出物を溶け込ませるための熱処理のこと。
(※3)TMCP技術:Thermo-Mechanical Control Process(熱加工制御)。制御圧延、加速冷却を駆使してオンライン製造で鋼材の強度や靭性などの特性を向上させる技術のこと。
【写真】クラッド鋼