PC版

MENU

ニュースリリース


JFEスチール株式会社

世界最大厚 100mmのYP460MPa級高アレスト鋼を新開発
~高アレスト性能と溶接性を両立~

当社はこのたび、超大型コンテナ船に適用可能な、世界最大厚となる板厚100㎜のYP460MPa級高アレスト鋼(※1、図1)を新開発しました。また、超極厚鋼板においては世界で初めて、溶接性とアレスト性能の両立も実現しています。

コンテナ船は、コンテナを数多く積載するため、デッキ上部に大きな開口部を有する特徴的な構造の船です。海上を航行する際、船体に大きな波の荷重を受けるため、デッキ上部やハッチコーミングと呼ばれる船体側面には、肉厚かつ高強度の鋼材を使用する必要があります。近年、輸送効率の向上を目的にコンテナ船が大型化しており、それに合わせて鋼板は板厚が50mmから100mmまで拡大し、YP460MPa級の高強度が求められるようになりました。

しかし、鋼材は板厚が大きくなるほど、また強度が高くなるほど脆くなる性質があります。そのため国際船級協会連合(※2)は、急速に大型化する船体の安全性確保のため、2014年1月以降に契約したコンテナ船に対し、構造上の安全確保とともに、板厚50mm~100mmかつYP460MPa級の鋼材において、一定以上のアレスト性能(※3)を義務付けました。

当社はこれまで、最大板厚80mmのYP460MPa級高アレスト鋼板を製造・販売してきましたが、船体の大型化が進み、80mmを超す超極厚な高アレスト鋼の開発ニーズが高まってきました。
一般的に、鋼板のアレスト性能を向上するためには、圧延による組織中の結晶粒の微細化(図2)が有効とされています。しかし、板厚が大きくなると十分に組織を微細化することが出来ず、アレスト性能の向上は困難になります。そのために当社は、結晶粒の微細化に加え、加熱温度や圧延温度を精緻に制御するTMCP技術(※4)を活用し、鋼板の板厚中央部にき裂の伝播に抵抗する向きの結晶比率を高める独自の技術(図3)を確立してきました。

今回、従来の独自技術をさらに発展させ、TMCP技術の最適化はもちろん、圧延時に組織中の結晶の向きを調整しやすいような成分設計を行いました。それにより、世界最高厚となる100mmのYP460MPa級鋼板においても、高アレスト性能の確保が可能になりました。

加えて、今回開発した鋼板は板厚が大きいにもかかわらず、高い溶接性も確保しています。一般的に、鋼板全体で均一に強度を持たせるため、板厚が大きくなると合金添加が必要となります。しかし、合金添加は溶接部を硬化させる原因となり、溶接性を低下させます。そこで当社は、TMCP技術を最適化して合金添加を極限まで低下させることで、板厚100mmのYP460MPa級鋼板において、世界で初めて溶接性と高アレスト性能の両立を実現しました。これにより、さらなるコンテナ船大型化の実現に寄与することができます。

今後とも当社は、高機能・高品位な鋼材の供給を通じ、船舶のさらなる経済性、安全性と信頼性向上に努めるとともに、地球環境の保全に貢献するなど、多様化するお客様のニーズに応えてまいります。

(※1)高アレスト鋼:溶接部に発生した疲労き裂が伝播を止め、船体の損傷被害を最小限にとどめる性能に優れた鋼板。(図1参照)
(※2)国際船級協会連合:船舶の検査機関である船級協会の集まりで、1968年に創設された。日本海事協会を含む、世界の主要8船級協会で構成されている。
(※3)一定以上のアレスト性能:鋼板に必要なアレスト靭性値(Kca)は、(一財)日本海事協会により、板厚50~80mmまでは6,000N/mm3/2以上、
板厚80mm超え~100mmは8,000N/mm3/2以上と示されている。

(※4)TMCP技術:Thermo-mechanical Control Process(熱加工制御)のこと。制御圧延、加速冷却を駆使して、オンライン製造で鋼材の強度や靭性を向上させる技術。
 

【図1】アレスト技術の概念図

構造アレスト技術 材料アレスト技術(※今回開発)
【図1】アレスト技術の概念図
 

【図2】結晶粒の微細化

【図2】結晶粒の微細化

 

【図3】結晶の方位制御によるき裂伝播抑制

【図3】結晶の方位制御によるき裂伝播抑制

 
本件に関するお問い合わせは、下記にお願い致します。
JFEスチール(株) 総務部広報室 TEL 03 (3597) 3166

ニュースリリース一覧へ戻る