ニュースリリース
JFEスチール株式会社
環境調和型の新しい溶銑予備処理プロセスを開発
当社は、製鋼工場の溶銑予備処理プロセスにおいて、新たに「脱硫剤投射法」を開発し、全社の製鋼工場内の機械撹拌式溶銑脱硫設備に導入しました。また、脱硫処理後のスラグを再利用する「スラグホットリサイクル法」も開発、実用化しました。これらの技術により、脱硫効率の向上、および環境負荷低減に寄与します。
溶銑予備処理とは、高炉から出銑された溶銑に含まれる珪素や硫黄、リンなどの不純物を予め除去(脱珪・脱硫・脱リン精錬)するプロセスで、副原料の使用量削減や歩留り向上を目的としています。機械撹拌式溶銑脱硫装置は、インペラーとよばれる撹拌羽根で溶銑を撹拌しながら、添加した脱硫剤を溶銑内に巻込ませ、脱硫精錬を行う設備です。
一般的には、直径1mm以下の微細な脱硫剤を溶銑上方の添加装置から自然落下させて添加します。添加された脱硫剤表面と溶銑との化学反応によって脱硫精錬が進行しますが、これまでは、脱硫剤を溶銑内に巻き込む最中に脱硫剤が直径数mm~数十mmの球状に凝集成長してしまい、脱硫剤の内部が化学反応に寄与しないという課題がありました。
今回開発した「脱硫剤投射法」は、新たに投射用のランス(ノズル)を設置し、高速の搬送ガスと共に脱硫剤を溶銑上に吹き付ける方法です。これにより、脱硫剤を直径1mm以下の微細の状態のまま直接溶銑内に添加でき、凝集成長を抑制することで、脱硫剤と溶銑との反応促進に繋がり、脱硫効率が1.3倍向上します。
【従来法と新しい方法の比較】
一方、「スラグホットリサイクル法」は、脱硫精錬後に排出したスラグ(脱硫スラグ)を、次の溶銑処理の際に高温状態のまま再利用するものです。処理直後の脱硫スラグは凝集粒の状態ですが、その後の温度低下によって凝集粒が崩壊し、未反応面が創出されます。脱硫スラグを繰り返し使用し、未反応面を有効活用することで、スラグの有する脱硫能力を最大限に発揮させることができます。また、スラグを高温のままリサイクルすることで、これまでスラグ排出時に放熱されていたスラグの熱量を回収することもでき、資源の節約と環境負荷低減が可能となりました。
当社はこれまで、積極的な技術開発と設備投資を積み重ね、世界最先端のエネルギー効率・資源循環率・環境保全技術を有する製鉄プロセスの確立に努めてまいりました。今後もさらなる新規技術の開発に努め、お客様や社会からのご要望にお応えしてまいります。