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ニュースリリース


JFEスチール株式会社

2020年 JFEスチール社長年頭挨拶

代表取締役社長(CEO)北野 嘉久
代表取締役社長(CEO)
北野 嘉久

明けましておめでとうございます。 新年にあたり、ご挨拶を申し上げます。

最初に、安全について一言申し上げます。昨年は重大事故が3件発生し、4名もの尊い命が失われました。誠に残念でなりません。ご冥福をお祈りするとともに、「安全はすべてに優先する」の基本理念に立ち戻り、直・協のJFEスチール構内で働く全員が現場での対話と「凡事徹底」の行動の下、自主自立の安全活動を実践していくよう心掛けてください。

さて、昨年を振り返りますと、米中貿易摩擦を背景とした両国間の追加関税の応酬や先行き不透明な英国のEU離脱問題などにより、中国をはじめ世界経済の減速が顕著となり、鉄鋼需要は急速に減少しました。特にアセアンにおいては、インド・ロシア・トルコなどからの鋼材流入により需給が緩み鋼材市況は下落しました。また、主原料市況は中国の粗鋼生産増により鉄鉱石を中心に高止まりし、いわゆる原料高・製品安の状況が続き、副原料・資材・物流費などの諸物価高騰もあり、当社の収益にとって非常に厳しい状況となりました。

そのような中、先般、2019年度の業績見通しが発表されましたが、当社の損益状況は、鉄鋼セグメント利益が赤字になりかねない過去に例を見ないほどの厳しい水準となっています。昨年のような鉄鋼事業環境が本年も継続するのか、回復に向かうのかは非常に不透明であり、厳しい試練の一年になると考えています。

われわれはこの状況からいち早く脱却し、さらなる成長の道筋を作っていかなければなりません。そのためにも、本年はこれまで以上に「収益改善」にこだわっていくつもりです。

コスト削減・固定費削減・経費削減などの徹底した合理化に取り組むとともに、セクター・センター単位で収益向上策を積み上げ、迅速に成果を出すことが必要です。また、主原料における高いボラティリティー(価格変動幅)、副原料・資材・物流費などの諸物価の高騰などにより収益が著しく圧迫される中、当社の商品・サービスの価値をお客様に認めて頂くことによる再生産可能なマージンの確保にも、昨年同様、継続的に取り組んでいく必要があります。

このように鉄鋼業を取り巻く環境は非常に厳しく、乗り越えるべき課題が山積している中ではありますが、JFEスチールが目指す「常に新たな価値を創造し、お客様とともに成長するグローバル鉄鋼サプライヤーを目指す」という長期ビジョンに変わりはありません。ビジョン実現のためには、6次中期経営計画にある主要施策を進めると同時に、前例にとらわれない新たな視点での施策の検討・推進も必要と考えており、皆さんには次の4点についてお願いしたいと思います。

第一に、製造実力の強靭化についてです。安定生産・安定操業に向けた製造基盤整備の継続に加え、倉敷7連鋳、福山3焼結の建設などにより生産能力の向上、高級製品の製造範囲の拡大などを図り、収益の源泉である製鉄所・製造所の製造実力を、より強靭で揺るぎないものに高めていかなければなりません。

第二に、海外プロジェクトの円滑な立ち上げと収益の確保です。本年も、JFEメランティーミャンマーのCGLなど、新ラインの稼働を予定しています。国内での拡販も進めていきますが、内需の大幅な拡大が見込めない中、JFEスチールグループの技術やサプライチェーンを活用しつつ、グローバル生産体制の拡大や海外鉄源のさらなる活用などを進めていかなければなりません。

第三に、IT・AIなどの最新技術の積極的な活用についてです。足下、高炉・焼結などの上工程でセンサーを多種多数導入し、最新モデル化技術を活用した炉状況の見える化なども行っています。今後、さらに活用の幅は広がっていくと考えており、さまざまな分野や課題において積極的に活用策を検討し実行してください。

第四に、前例にとらわれない新たな視点での施策の検討・推進についてです。当社を取り巻く環境が激変する中、その変化に対し柔軟にかつ先手を打って対応していかなければなりません。かつては異常な状態といわれていたことがありふれた当然のものになる、いわゆる「ニューノーマル」として環境変化を受け止め、当社がこれまでとは別のステージにきたことを認識し対処していくことが重要です。それにはこれまでの延長線上にある施策だけでは不十分であり、例えばボリュームゾーンにおいて世界レベルを超える競争力に高める技術開発や設備投資、中長期的な鉄鋼業を取り巻く環境を想定した最適生産体制の構築など、前例にとらわれない新たな視点での施策の検討・推進がこれまで以上に必要になっています。本年は7次中期経営計画の検討・立案の年でもあります。社員一丸となって厳しい環境を乗り越え、当社が将来にわたり成長していくための道筋を描いていきたいと考えています。

これらの課題に取り組むにあたり、まずは当社の経営環境が厳しいことを全員が認識し、各人それぞれの置かれた立場で何ができるかを真剣に考えてください。その上で、皆さんには次の2点を心掛けて行動してほしいと思います。

一つ目は新しいことに挑戦する気持ち・姿勢を常に持ってほしいということです。現状維持は衰退の始まりです。成長していくためには挑戦が不可欠であり、新しいものを生み出そうとする気概を常に持つことが重要です。また、失敗を責めず、チャレンジを褒める上司のマネジメントも必要です。それらにより、社員が生き生きと新しいことに挑戦する活力ある会社になっていくと考えています。

二つ目は、自ら考え、自ら語り、自ら行動しようということです。自身の想いを実現していくためには、自分の頭で何をしたいか、何をすべきかを考え抜き、それを相手に伝えるためのコミュニケーション力を磨き、さらに、それを具現化するための行動力・実行力を持つことが必要です。平均年齢が40歳を下回る若い会社である当社において、ベテラン社員だけでなく、若手社員の積極的なアウトプットは不可欠です。各人それぞれの置かれた立場や持ち場で、なすべきことを自ら考え、語り、行動してください。

JFEスチールが家族や社会に誇れる会社になるためには、社員全員が健康で生き生きと働ける安全な職場づくりが不可欠です。管理監督者の皆さんは、毎日現場に出て、現場の生産・保全活動を掌握し改善活動を行ってください。不十分な場合は作業者とのコミュニケーションをしっかりとり、より良い状態に改善してください。一方、作業者の皆さんは、決められたルールを確実に守る「凡事徹底」を心掛けてほしいと思います。これらの取り組みやデュポン社から学んだ内容や考え方を徹底し、真に「自主自立」した職場づくりを実現していきたいと考えています。昨年は防災事故も残念ながら撲滅できませんでした。事故の防止にも引き続き注力してください。

また、昨年も日本では多くのコンプライアンス違反が発生しました。企業活動は社会からの信頼の下に成り立っています。一つのコンプライアンス違反が、ものづくりに対する信頼の根幹を揺るがし、企業そのものの存続を脅かす事態になりかねないということを肝に銘じ、今一度、気を引きしめ直してほしいと思います。

最後に、労働組合の皆さんに一言申し上げます。足下の厳しい経営環境下で、さまざまな経営課題に対応していくためには、労働組合の皆さんのこれまで以上のご理解とご協力が不可欠です。労使で十分に意思疎通を図り、この難局を乗り切っていきたいと思っています。引き続き、よろしくお願い致します。

以上、年頭にあたり所信を申し述べました。本年が皆さんとご家族にとって実り多く健康で幸せな一年となりますよう心から祈念し、新年の挨拶と致します。