ニュースリリース
JFEスチール株式会社
平成27年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞
-建築構造用高性能鋼を用いた巨大地震対応技術の開発-
このたび当社は「建築構造用高性能鋼を用いた巨大地震対応技術の開発」の成果が認められ、平成27年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰(*1)科学技術賞(開発部門)を受賞し、本日表彰式が文部科学省(東京・千代田区)にて行なわれました。当社の同賞受賞は3年連続となります。
受賞案件 | : | 「建築構造用高性能鋼を用いた巨大地震対応技術の開発」 | |
受賞者 | : | JFEスチール(株) スチール研究所 土木・建築研究部 | 加村久哉 |
JFEスチール(株) スチール研究所 土木・建築研究部 | 石井匠 | ||
JFEスチール(株) 建材センター 建材開発部 建材技術室 | 難波隆行 | ||
JFE鋼板(株) 商品化部 | 藤澤一善 | ||
JFEスチール(株) 西日本製鉄所 鋼材商品技術部 厚板・鍛造室 | 大森章夫 |
近年、建設時の想定を上回るM7以上の巨大地震に対して、更なる耐震性向上と、地震発生時に建築物の骨組を構成する柱と梁の接合部を損傷させない技術が求められています。
これらのニーズに対し、当社は以下3点の商品と技術を、開発・実用化しました。
① | 柱と梁の耐震用鋼材として、高強度、高靭性と低降伏比を併せ持つ高性能な建築構造用鋼材である、 550MPa級高張力厚鋼板『HBL385』を実用化 |
② | 柱と梁の接合部が、溶接時に熱の影響を受けても脆性破断しにくい溶接接合技術(*2) |
③ | 低降伏点鋼材を用いた、地震エネルギーを吸収する制振ブレース(*3)の設計技術 |
これらの成果により、柱と梁の溶接接合部に発生する初期亀裂を、低降伏比・高靭性の鋼材側に伝播させることによって脆性破断を防ぐこと、また低降伏点鋼材を用いた制震ブレースを骨組に配置して、地震エネルギーを吸収することにより、柱と梁の接合部の変形、損傷を防ぐことが可能になりました。すでに東北地方太平洋沖地震などで安全性が実証されており、建築物の耐震安全性向上に寄与しています。
今回の受賞は本技術が、建築物の強度・安全性を飛躍的に向上させることにより、巨大地震対応技術に大きく寄与したことが高く評価されたことによるものです。
当社は今後とも、お客様のニーズにお応えできる最先端の技術革新、商品開発に注力し、高機能・高品質な鋼材商品の提供を通じて、社会に貢献してまいります。
【写真】文部科学省での表彰式

(*1)科学技術分野の文部科学大臣表彰:
科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的としている。
(*2)脆性破断しにくい溶接接合技術:
溶接時の熱によって鋼材の一部に生じる材質変化は、強度や靭性の低下を招き、耐震性能に悪影響を及ぼすことがあります。本技術は、溶接部近傍に亀裂が発生した場合、熱影響で材質変化を生じた接合部ではなく、亀裂の伝播を靭性の高い周囲の鋼材側へ制御する溶接方法です。
(*3)制振ブレース:
JFEの制振ブレース(二重鋼管タイプ)は、図1に示すように、補剛管(外管)が軸力管(内管)の全体座屈を拘束することによって、軸力管が地震による振動エネルギーを効率よく吸収し、補剛管が軸力管の挙動を安定させます。このため、小さな部材断面で、構造物の剛性をほとんど変えずに地震による振動エネルギーだけを吸収して構造物の変形を抑えることができ、高い耐震性能を得られます。軸力管を補剛管で座屈防止する二重鋼管方式のため、鉄筋コンクリート等で座屈拘束した場合に比べて、軽量かつスレンダーとなり、また円形断面であることから景観にも優れています。

図1 制振ブレース(二重鋼管タイプ)