

JFE スチール 常務執行役員
鋼管セクター長
笹田 幹雄
前回の鋼管特集号を発行してから2年間が経過し,この間,鋼管事業を取り巻く環境は大きく変わってきた。中国を中心に鉄鋼生産量が大幅に増加し,2004年には全世界の粗鋼生産量が年間10億トンを超え,さらに増加を続けている。一方では,鉄鋼メーカーの大規模な再編が進展している。鋼管についても,中国がここ10年で生産量を大幅に増加させ,2005年には継目無鋼管と溶接鋼管の合計で全世界の1/3の約2600万トンを生産するに至っている。さらに,エネルギー需要の高まりにともなう鋼管需要の大幅な増加を背景にして,BRICsを中心とした新規ミルの立ち上がりや,大型投資計画の発表など,鋼管のマーケット構造の変革が進んでいる。石油価格が高止まりし好調な業績が続いているエネルギー産業においても,新たな石油,天然ガスの開発や生産が,極地や深海などの過酷な環境にシフトした結果,その生産および輸送に関わるコストダウンの要求はむしろ強くなり,石油・天然ガスを生産する井戸や,パイプラインの設計,施工に関する技術開発を加速させている。このような状況の中で油井管・ラインパイプは,さらに優れた特性と高い品質が要求され,中でも井戸やパイプラインの安全性を保障するための腐食や破壊に対する配慮が材料にも強く求められている。JFEスチールは,社会に貢献する鉄鋼メーカーとして,常に新しい分野への研究開発に注力している。特に鋼管の分野では,早くから,13%Cr鋼を中心にした高強度高耐食油井管用の継目無鋼管,高変形鋼管や耐サワー鋼管に代表されるUOE鋼管,世界最大径を有する高品質のラインパイプ用電縫鋼管など,優れた特性と高い信頼性を有する材料を開発するばかりではなく,破壊や腐食現象の解明,評価手法の確立などの研究を進めてきた。
本特集号では,JFEスチールおよびグループ会社の鋼管にかかわる事業の全貌と,各社のナンバーワン商品を紹介する。論文としては,パイプラインの安全性にかかわる研究成果を中心に,耐食性を求められるラインパイプ用12%Crマルテンサイト系ステンレス鋼,13Cr系油井管,および,自動車用鋼管に関する研究成果を報告する。技術開発を核とするJFEスチールの企業理念に基づく活動の一端をご理解いただければ幸いである。