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ニュースリリース


JFEスチール株式会社

2018年 JFEスチール社長年頭挨拶

取締役社長(CEO)柿木 厚司
取締役社長(CEO)
柿木 厚司

明けましておめでとうございます。新年にあたり、ご挨拶を申し上げます。

昨年の世の中の状況を振り返りますと、結果としては比較的安定した1年でした。しかし、米国のトランプ大統領就任とそれに伴うTPP離脱やパリ協定離脱に加え、北朝鮮のミサイルや核兵器問題で地政学的なリスクが高まるなど、世界的には不確定要素が大きくなった年だったと思います。 また、鉄鋼業界を取り巻く環境については、世界的な鉄鋼供給過剰問題は基本的には継続しているものの、中国の生産能力削減や内需拡大などの政策に支えられて、中国からの鋼材輸出量が減少しました。そのため、国際的な鋼材市況はこの半年間は高位に推移しています。しかし、原料炭をはじめとする資源価格が乱高下する構造に大きな変化はなく、先に述べた中国の各政策の継続性の見極めも必要であり、不確定要素はより増してきていると感じています。一方で、世界各国で自動車のEV化を加速化する政策が打ち出されたり、IoTやAIなどの技術革新が進展するなど、世の中の変化のスピードがより一層早まってきていると感じています。 昨年は、JFEスチール単独収益が2年連続の赤字であったことを踏まえて、2017年を、第5次中期計画の最終年として「結果を出す1年」にして欲しいとお願いをしました。こうした変化のスピードとその振れ幅が激しい環境の下で、社員の一人ひとりが第5次中期計画の施策を推進してくれたお蔭で、収益的にはV字回復の目途が立ちました。社員の皆さんの努力に感謝すると共に、結果を出してくれたことを誇りに思います。しかし、この結果には、先に述べました国際的な鋼材市況の回復という追い風に依る部分もあったことは否めません。また、第5次中期計画の最重要課題である製造基盤整備は、例えば購入コークスの削減という課題は克服しましたが、安定稼働・安定生産には課題を残しており、道半ばであると認識しています。

JFEの目指す姿と2018年の重点課題

今年2018年は、第6次中期計画の初年度になります。策定中の第6次中期計画においても、5次中期で掲げた長期的なビジョン「常に新たな価値を創造し、お客様とともに成長するグローバル鉄鋼サプライヤー」は変わりません。そのビジョン実現のための重点課題も基本的には5次中期の延長線上であり、以下の4点となります。 第一に、当社の最大の課題として経営資源を投入してきた製造基盤整備の推進を継続することです。設備投資については、2017年当初計画時点で5次中期計画比プラス10%の増額で考えていましたが、6次中期案件の中で成果の大きい案件を更に前倒し、5次中期計画比プラス30%まで積み増します。

5次中期期間には計画通りの収益を上げることが出来ませんでしたので、保有株式の売却など資産の圧縮により、これら設備投資の原資を捻出している状況です。6次中期でも引き続き、製造基盤整備に必要な設備投資を遅れることなく推進していきます。あわせて、十分な結果の出ていない製造の安定化について、技術力不足の解消など人的側面からもトラブル防止や生産能力の回復に努めて頂きたいと思います。 第二に、会社の収益向上に貢献する技術開発の推進です。環境変化を先取りし且つ変化の激しさに対応すべく、製販技が一体となって高級鋼の開発、製造、販売のPDCAサイクルの回転を上げてください。また、ボラティリティ(価格変動幅)が一層高くなった原料コストの削減に寄与する新プロセス開発に注力してください。6次中期でも高級鋼の販売拡大やコスト削減に寄与する技術開発を具現化した設備投資をより一層推進していきたいと思います。 第三に、JFEブランドの浸透・拡大です。メーカーや流通の再編が進展している中で、機会を逃さず、お客様と真摯に向き合い、JFEのプレゼンスを高め、我々のマザー工場が立地している日本国内の数量拡大を極限まで追求して欲しいと思います。また海外では上海の鉄粉合弁事業やUAEの大径溶接鋼管合弁事業が営業生産を開始すると共にベトナムFHSも2本目の高炉の火入れが予定されています。これらをフル活用して、グローバルにJFEブランドの拡大に努めてください。 第四に、大幅な世代交代の中で実行してきた技術力継承と人材育成の推進を継続し、更に深化させることです。テクニカルエキスパートやITツール活用などを含めて、若年層の更なる底上げと共に現場第一線の中間マネジメント層のレベルアップを実現し、次世代に繋がるように人的資源の質の向上をスピードアップさせてください。

2018年の行動指針

これら4点の重点課題に取り組むにあたり、2017年度の収益向上は、環境の追い風にも助けられた面があるので、外部環境が下振れしてもグローバルサプライヤーとして未来に向けた成長を持続出来る強靭な企業体質を創り上げることが重要であることを全社員が認識した上で、各人の課題解決に邁進して頂きたいと思います。

経営もIT改革などの環境整備により各人の時間創出を進めると共に、業務改革により仕事のやり方も変えていきます。具体的には、いつでもどこでも必要な作業標準・技術標準のチェックが出来るタブレットの導入や業革システム・利計システム立ち上げによる利計の入力負荷軽減や較差解析の簡易化などです。2018年は皆さん一人ひとりも考え方を変え、次の2点を心がけて行動して欲しいと思います。

一つ目は、変化の激しい環境下でも十分な成長を持続していくために、前向きに、より創造的な仕事に取り組み、生み出す付加価値を最大化させてください。会社全体の付加価値を最大化させるためには、各人が生産性を高めた上で、全体が同じベクトルを向くことで、総和としての付加価値を最大化することが重要です。 二つ目は、各人の生み出す付加価値の最大化とワークスタイル変革の推進との両立を実現してください。そのためには、各人が固定観念に囚われずにゼロベースで業務の中身を再考し、付加価値の最大化という目的のために優先順の高い業務に対して、各人のパワーをより集中させてください。特に、計画策定や報告資料に時間を割くより、実践と改善に注力して、実績を着実に向上させる地に足が着いた活動を推進して欲しいと思います。各人が前向きな仕事に取り組む割合を増やすことで、活力ある職場作りを実現して欲しいと思います。 未来に向けて持続的な成長を実現することが、JFEスチールを誰もが誇れる会社にすることに繋がると考えています。

JFEスチールを家族や社会に誇れる会社にするためには、社員全員が安全、健康でいきいきと働ける職場作りが最重要課題です。昨年も重大災害が2件発生し尊い命が失われました。誠に残念でなりません。今年は、ここ3年で新たに取得した知見、すなわち対話型パトロール、管理者・経営者教育、災害調査、安全監査を浸透・定着させる年です。特に、第2者監査制度を十分に活用して職場の課題の発掘と解決を図り、PDCAを回してください。そして、真に『自主自立』した職場を作る様に注力してください。更に残念ながら防災事故も撲滅出来ていません。今年も事故を防止することにも注力してください。

また、昨年は日本でも多くのコンプライアンス違反が発生し、日本のものづくりの信頼性の根幹が揺るぎかねない事態となっています。こうしたコンプライアンス違反が企業の存続を脅かしかねないという事実を再認識してください。今一度、原点に立ち戻り、安全、防災、コンプライアンスについて事故や違反を起こさないよう、社員一人ひとりが決意を新たにして頂きたいと思います。

最後になりましたが、労働組合の皆さんに一言申し上げます。先ほど申し上げた通りのかつてないほどの変化の大きい経営環境下で、個々の経営課題に対応していくためには、労働組合の皆さんの今まで以上の協力が不可欠です。労使で十分に意思疎通を図り、全社一丸となって強靭な企業体質を創り上げるよう、ご協力をよろしくお願いいたします。

以上、年頭にあたり、所信を申し述べました。本年が皆さんとご家族にとって実り多く、健康で幸せな一年となりますよう心から祈念し、新年の挨拶といたします。