2011年3月4日
  • JFEスチール株式会社

第57回(平成22年度)大河内記念賞を受賞
~ナノ炭化物制御による自動車用高加工性新高強度鋼板の開発~

このたび、当社の開発した「ナノ炭化物制御による自動車用高加工性新高強度鋼板」が、(財)大河内記念会(理事長:吉川弘之 科学技術振興機構研究開発戦略センター長)より第57回(平成22年度)大河内記念賞を受賞し、本日、日本工業倶楽部(東京・千代田区)にて贈賞式が行われました。大河内記念賞は、生産工学上優れた独創的研究成果をあげ、学術の進歩と産業の発展に多大な貢献をした業績に与えられるもので、大河内賞の中で最上位に位置付けられています。鉄鋼業界からの記念賞受賞は、平成10年度のNKK受賞以来12年ぶりです。

1.受賞理由

今回の受賞は、超微細炭化物を加工性の良いフェライト(軟鋼組織)に均一分散させることで、440MPa級と同等のプレス加工性(*1)を有する780MPa級高強度鋼板を世界で初めて開発したことが高く評価されたものです。

2.開発の経緯

自動車重量を軽量化するためには鋼板の高強度化が必要ですが、その際鋼板の加工性を損なわないことが課題となります。従来は加工性に富んだフェライト粒と焼入れで生じる硬質相との組織複合化による高強度化が主流であり、合金炭化物を析出(*2)させて高強度化する方法は加工性と強度の両面で良好なものが得られないと考えられていました。この常識に対し、超微細析出物を活用した、引張強さ780MPa級の鋼板の研究に着手し、従来の780MPa級鋼板をしのぐプレス成形性を有する高強度鋼板の開発に成功しました。

3.開発内容

当社では、高強度鋼板の組織とプレス加工性に着目し、新たな発想で組織設計を行い、従来材を上回る特性の実現に成功しました。キーとなる技術は以下の通りです。

加工性の乏しい硬質相をフェライトと複合するのではなく、フェライトそのものを高強度化することで高プレス成形性を実現する。
炭化物の微細化は微細均一に析出させることと粗大化抑制が重要であり、微細均一析出に相界面析出(*3)現象を用い、粗大化防止にチタン(Ti)とモリブデン(Mo)の複合炭化物を用いる。

これらの技術を組み合わせることで、フェライト中に大きさ3ナノメートル(*4)の炭化物を分散させ、強度と加工性を両立させることに成功しました。
 本開発鋼の組織は鉄鋼材料組織のイノベーションです。本開発鋼板は衝突時のエネルギー吸収性能にも優れており、従来鋼板よりも板厚を薄くすることができるため、既に『NANOハイテン®』の商品名で足回り用から車体構造用まで自動車の幅広い部品に使用され、車体の軽量化を通じた燃費の向上およびCO2の排出削減に大きく貢献しています。

当社は今後とも、お客様の軽量化ニーズにお応えするとともにCO2削減による地球環境保護に貢献してまいります。

*1) プレス加工性:自動車部品にプレス成形するときに高強度鋼板に必要な伸びフランジ加工性。
*2) 析出:高温で鋼中に溶けていたチタン(Ti)や炭素(C)などが、温度低下によりTiC化合物などの結晶体として現出する現象。
*3) 相界面析出:鉄の高温の結晶配列から低温での結晶配列に並び代わるとき、その境界上に炭化物が結晶体となる現象。高速に結晶体となる。
*4) 1ナノメートルは10億分の1メートル。人の毛髪の太さは約10万ナノメートル。
大河内記念賞受賞式典の様子 大河内記念賞受賞式典の様子

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JFEスチール(株)総務部広報室 TEL03(3597)3166