2010年8月25日
  • JFEスチール株式会社

大口径・高強度鋼管の実管内圧曲げ試験装置を世界で初めて開発
~外径48インチの高変形鋼管「HIPER®」の変形性能を実証~

当社は、外径48インチ(1,219mm)の高強度鋼管の曲げ変形性能を実証する実管内圧曲げ試験装置を世界で初めて(*1)開発しました。この実証試験装置は、パイプラインプロジェクトで使用される鋼管に内圧をかけた状態で曲げ変形を与え、鋼管の曲げ座屈限界変形量と曲げ破壊限界変形量を調べる装置です。当社は2000年に他社に先駆けて高強度かつ変形性能に優れた高変形鋼管「HIPER®」(*2)を開発し、これまで多くの実証試験を実施してきましたが、今回の開発により、外径48インチの高強度「HIPER®」の変形性能を実管で実証することが可能になりました。この試験装置を使用し、中国第二西気東輸パイプライン(*3)向けに製造した外径48インチ、X80グレード(*4)の「HIPER®」の変形性能をお客様立会いの下に実証し、採用につながりました。

近年におけるエネルギー需要の増大を背景とし、CO2の排出量を抑制するために天然ガスの利用が増加しています。天然ガスの75%はパイプラインによって輸送されており、最近は大量の天然ガスを高圧パイプラインで長距離輸送するため、従来より大口径かつ高強度の鋼管のニーズが高まっています。また、天然ガスパイプラインは地震地帯や凍土地帯に敷設されることがあり、パイプラインの安全性を向上させるため、鋼管には外力に抵抗する強度だけでなく、地盤の変形に追従するしなやかさが要求されるようになってきています。

「HIPER®」はこの要求に応えるために開発されたパイプライン用鋼管で、高強度ながらしなやかに変形する特長を有しています。また、管厚を増加させることなく、材質設計によって曲げ変形性能を向上させているため、建設コストを削減しながら天然ガスパイプラインの安全性を向上させることができます。これらの特長が認められ、第二西気東輸パイプラインの地震地帯には、外径48インチ、X80グレードの「HIPER®」が採用されました。

当社はこれまで、外径20インチ(508mm)から36インチ(914mm)までの「HIPER®」および一般鋼管の変形性能に関する実証試験を行ってきました。その試験データに基づいて、外径36インチ以下の鋼管についてはコンピュータの計算モデルの妥当性を検証し、曲げ変形性能を高い精度で推定する計算手法を確立しています。しかし、この計算手法は外径48インチの鋼管にそのまま適用できないため、外径48インチ「HIPER®」の実用化にあたっては実証試験とともに計算手法を確立する必要がありました。今回開発した実証試験装置により、大口径かつ高強度の「HIPER®」の変形性能を実管で実証し、曲げ変形性能を推定する計算手法を確立することで、外径48インチ高強度鋼管の実用化とともに天然ガスの安定供給に貢献できるようになります。

当社はこの実証試験装置を駆使し、強度およびサイズのバリエーションが豊富な「HIPER®」の開発を通して、現在検討が進められている中国の次期西気東輸パイプラインプロジェクト、北米のアラスカパイプラインプロジェクト(*5)についても、大口径かつ高強度の「HIPER®」の適用を目指してまいります。

当社は今後も、天然ガスパイプラインの安心・安全をテーマとして、計画中の大型プロジェクトの実現に向けて、天然ガスパイプラインの安全性向上と安定供給に貢献してまいります。

【試験装置仕様】
最大径 : 48インチ (最大板厚 30mm)
鋼管長 : 最長8m
最大荷重 : 6,000kN
最大曲げモーメント : 35,000 kN・m
最大内圧(水圧) : 30MPa
(*1) これまでに学会等で報告されている実管内圧曲げ試験装置としては世界初です。
(*2) HIPER®Higher Performance for Earthquake Related Ground Movementsの略。
 従来の鋼管と比較して変形性能に優れており、圧延段階で高精度温度制御性と高冷却機能を併せ持つSuper-OLAC (OnLine Accelerated Cooling) で製造される高強度厚鋼板を使用しています。これにより高加工性と高強度に加え、高い溶接施工性や靭性を実現させています。さらに厚板オンライン加熱設備HOP(Heat-treatment On-line Process)を適用し、お客様の材質要求にも高レベルに対応できます。
受注実績 2010年3月末までの累計で国内2,660トン、国外63,445トン
受 賞 暦 第34回(平成19年)岩谷直治記念賞
平成22年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)
(*3) 中国第二西気東輸パイプラインプロジェクト、次期西気東輸パイプラインプロジェクト
 中国西部のタリム盆地で採掘された天然ガスを、上海など中国東部沿岸の需要地域に輸送する巨大パイプラインプロジェクト。第二パイプラインの総延長は約4,800kmで、2009年にガス輸送を開始した。次期ラインも第二ラインと同等の規模で、2012年のガス輸送開始を予定している。
(*4) X80グレード
 アメリカ石油協会(API)の規格に準拠したパイプラインの強度等級。X80グレードは降伏強度が555MPa以上のラインパイプに対応する。
(*5) アラスカパイプラインプロジェクト
 アラスカ北部で採掘された天然ガスを、カナダを経由してアメリカ合衆国まで輸送する巨大パイプラインプロジェクト。パイプラインの総延長は約2,800kmで、2018年のガス輸送開始を予定している。

【写真1】48インチ実管曲げ試験の様子

48インチ実管曲げ試験の様子

【写真2】曲げ試験後の鋼管の座屈変形状況

曲げ試験後の鋼管の座屈変形状況

以上

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JFEスチール株式会社 総務部広報室 TEL 03 (3597) 3166