当社は、自動車用防錆鋼板の実車における耐食性を腐食促進試験法(注1)から予測する新技術を開発いたしました。本技術を適用することで、開発した防錆鋼板の穴あき耐食性を正しく評価することが可能となり、自動車における防錆鋼板の開発・選定の最適化を図ることができます。
1960年代以降、北米や欧州において路面凍結による事故を防止するため、冬季に融雪塩が大量に散布され、自動車の腐食が社会問題化する中で、自動車メーカーは防錆性能の向上を図ってきました。特に、スポット溶接等により接合された鋼板合わせ部における「穴あき腐食(注2)」は、外見からは見つけにくく補修も出来ないため、生産段階での防錆設計、とりわけ防錆鋼板の性能が重要になります。
防錆鋼板の開発や選定には、様々な腐食促進試験法が用いられますが、人工的に設定された試験条件により材料間の耐食性の優劣が変化するため、従来、実際に使用される環境下での実車の耐食性を予測することは、極めて困難でした。
亜鉛めっき鋼板は、実車において以下の4つの腐食過程を経て穴あきに至ると考えられます。
| ① | 亜鉛めっき自体の腐食期間 (τ1) |
| ② | 亜鉛めっきの犠牲防食期間 (τ2) (亜鉛めっきの腐食が下地鋼に達した後、亜鉛めっきが鋼に優先して腐食する期間) |
| ③ | 亜鉛腐食生成物による下地鋼の腐食抑制期間 (τ3) (亜鉛めっき腐食生成物である亜鉛錆が下地鋼の腐食を抑制する期間) |
| ④ | 下地鋼の腐食期間 (τ4) (下地鋼が腐食し始め、穴あきに至るまでの期間) |
実車での耐食性を、より正確に予測するためには、亜鉛の防錆効果を適切に再現する必要があります。ある腐食環境下における「純亜鉛めっき鋼板のめっきの腐食速度V(pure zinc coating)」と、「下地鋼の腐食速度V(steel)」をそれぞれ、
V(pure zinc coating) = めっきの厚さ ⁄ (τ1+τ2+τ3)
V(steel) = 鋼板の板厚 ⁄ τ4
と定義した場合、穴あき腐食に対する亜鉛の防錆効果は、PCI(Perforation Corrosion Index)として表すことができます。
PCI = V(steel) ⁄ V(pure zinc coating)
当社では、実車による腐食解析を実施し、北米の実車におけるPCIは約80であることを知見として得ており、これを基準として各種腐食促進試験法の腐食との相関を評価しました。
これを基に、新しい防錆鋼板の開発に際しても、PCIが異なる複数の腐食促進試験から得られる耐食性の傾向を用いて、実車における穴あき耐食性を正確に予測できることを見出しました。
本評価技術は、当社千葉地区に開設したカスタマーズソリューションラボ(通称:CSL)に設けられた腐食解析技術のコーナーにおていも一部をご紹介しており、お客様からも高い評価を頂いております。
| (注1)腐食促進試験法 | :人工的に設定された環境で防錆鋼板の腐食を促進し、短期間で耐食性を評価するための試験。一般的な試験条件は、塩水噴霧、乾燥の組み合わせを繰り返すことにより構成される。 |
| (注2)穴あき腐食 | :鋼板合わせ部などに発生する自動車における腐食形態のひとつ。合わせ部の内側や部品の内面から腐食が発生・進行し、外面に達する。 |

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