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JFEスチールは、このたび、建築構造向け大入熱溶接*1用高HAZ靭性高張力鋼板*2「SA440-E」(設計基準強度:440N/mm2)、大入熱サブマージアーク溶接*3用鉄粉入りフラックス*4「KB-60IAD」、エレクトロスラグ溶接*5用ソリッドワイヤ*6「KW-60AD」・フラックス「KF-100AD」を開発し販売を開始しました。これにより、高HAZ靭性鋼板は、設計基準強度325〜440N/mm2まで対応可能で、建築構造設計時の選択肢が広がります。また、高靭性タイプの溶接材料を併せて使用することで、板厚60mm程度までの大入熱1ランサブマージアーク溶接(最大溶接入熱約650
kJ/cm)および大入熱エレクトロスラグ溶接(最大溶接入熱約1,000 kJ/cm)のHAZおよび溶接金属において、脆性的破壊防止の指標とされる70J以上のシャルピー吸収エネルギー(試験温度0℃)が得られ、大入熱溶接継手全体の高靭性化も可能となります。さらに、高靭性が要求される箱型断面溶接柱(四面ボックス柱、補足資料@参照)でも高能率の溶接施工が可能となり、大幅な工期短縮・施工コスト削減が期待できます。
開発の背景
近年、建築物の高層化・大スパン化・複合化に伴い、鉄骨構造にはより厚肉・高強度の鋼材が用いられるようになっています。また、兵庫県南部地震以降、耐震性向上のため、鉄骨構造接合部の高靭性化が強く求められています。しかしながら、大入熱溶接が適用される箱型断面溶接柱においては、溶接部が長時間高温にさらされるため、従来の技術では溶接部の高靭性化に限度がありました。
「JFE EWEL」を用いた高HAZ靭性鋼「SA440-E」の開発
当社では、このような大入熱溶接継手のHAZ靭性向上の要求に応えるべく、独自のHAZ組織制御技術、「JFE EWEL(イーウエル)」を開発いたしました。JFE
EWELの特長は下記の通りです。
| @ |
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Super-OLAC*7を活用した鋼板製造時の加速冷却温度制御により、「鋼板組成の最適設計」を実現 |
| A |
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鋼中微細粒子*8の最適利用により、「HAZ組織の微細化」を実現 |
| B |
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マイクロアロイング技術(元素微量添加技術)*9による「HAZミクロ組織制御」を実現 |
この「JFE EWEL」を建築構造用鋼板に適用することにより、大入熱溶接における高HAZ靭性要求に対応することが可能となりました。今回開発した「SA440-E」を始め、当社独自の強度規格の「HBL385-E」(設計基準強度:385N/mm2)なども含め、構造設計時の高HAZ靭性鋼の選択肢が格段に広がります(表1参照)。
高靭性タイプの溶接材料「KB-60IAD」「KW-60AD」「KF-100AD」の開発
高HAZ靭性鋼板「SA440-E」に適合し、かつ大入熱溶接時にも溶接金属を均一・微細なミクロ組織とすることが可能な溶接材料として、サブマージアーク溶接用鉄粉入りフラックス「KB-60IAD」、およびエレクトロスラグ溶接用ソリッドワイヤ「KW-60AD」・フラックス「KF-100AD」を新たに開発いたしました。これにより、各グレードの高HAZ靭性鋼に対して、溶接金属の高靭性要求を満足できる溶接材料を提供することが可能となりました(表2参照)。
今回の開発品は、既に複数の需要家に対してサンプルを出荷しており、評価作業、商談が進んでおります。今後、建築構造向けに本格採用されることが期待されます。
【註】
- *1 溶接入熱:
- 溶接の際、外部から溶接部に与えられる熱量。単位は、kJ/cm。
- *2 高HAZ靭性鋼板:
- 大入熱溶接時のHAZ靭性が、一般鋼よりも優れた鋼板。HAZ(Heat Affected Zone)は、溶接熱影響部。
- *3 サブマージアーク溶接:
- 溶接箇所にあらかじめ散布した粒状フラックスの中に溶接ワイヤを送り込み、フラックスに覆われた状態でアークを発生させて溶接する方法。(補足資料@参照)。
- *4 フラックス:
- 溶接時に予め溶接箇所に散布される粒状の材料。鋼板とワイヤの先端との間に発生するアーク周辺で溶融スラグとなって溶融金属を覆い、これを保護する。また、溶融金属との化学反応によって溶接金属の質を高め、さらに安定で滑らかなビード面を形成させる。
- *5 エレクトロスラグ溶接:
- 溶接スラグと溶融金属が溶接部から流れ出ないように囲み、溶融したスラグ浴の中に溶接ワイヤを連続的に供給して行う溶接。主として溶融スラグの抵抗発熱によって溶接ワイヤが溶融し、順次上向きに溶着金属が盛り上がって溶接が進行する。(補足資料@参照)。
- *6 ソリッドワイヤ:
- 中空でない断面同質な溶接ワイヤ。
- *7 Super-OLAC(スーパーオラック) :
- 理論限界相当の高冷却速度の実現と高精度での冷却停止温度制御を両立した厚鋼板のオンライン 加速冷却設備。2002年度大河内記念技術賞を受賞。
- *8 鋼中微細粒子:
- 窒化物、酸化物、硫化物など、HAZ組織の高靭性化に寄与するもの。鋼板のグレード、要求仕様に応じて使用。
- *9 マイクロアロイング技術:
- 重量比で数ppm〜0.1%程度といったごく微量の添加で効果を有する元素(マイクロアロイ)を用いた材料設計技術。
表1 JFEスチールの建築構造向け大入熱溶接用高HAZ靭性鋼板
| 鋼板 |
設計基準強度
(N/mm2) |
引張り強度
(N/mm2) |
| SN490-E |
325 |
490級 |
| HBL325-E |
325 |
490級 |
HBL355-E |
355 |
520級 |
| HBL385-E |
385 |
550級 |
| SA440-E(今回開発) |
440 |
590級 |
表2 JFEスチールの建築構造向け大入熱溶接用高靭性溶接材料
| 溶接法 |
引張り強度
(N/mm2) |
ソリッドワイヤ |
フラックス |
| サブマージアーク溶接 |
490級
520級 |
KW-55 |
KB-55I AD |
550級
590級 |
KW-101B
+
KW-55 |
KB-60I AD
(今回開発) |
| エレクトロスラグ溶接 |
490〜590級
共通 |
KW-60AD
(今回開発) |
KF-100AD
(今回開発) |
【補足資料】
溶接熱影響部組織の模式図
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