JFEスチール(株)では、燃料タンクを中心とした燃料系部材用途に必要な耐食性、加工性を有するフェライト系ステンレス鋼「JFE-SX1」※1の開発を進めてきました。
このたび開発した燃料タンク用フェライト系ステンレス鋼は、AISI(米国鉄鋼協会)が主催する米国における鉄系燃料タンク用素材選定 (SASFT※2)に関する共通外面腐食試験(15年-15万マイル保証)において燃料タンク用素材として十分な耐食性を有することを実証しました。
SASFTの共通腐食試験結果および堀江金属工業(株)で製作された展示用燃料タンク成形品(写真)が、本年2月にデトロイトで開催された2つの国際会議で報告・展示され、新しい燃料タンク用素材として世界に紹介されました。
あわせて、本鋼で試作した燃料タンク形状の展示品は、自動車メーカーおよび部品メーカーから高い関心をいただきました。
従来、自動車の燃料タンク用材料には鉛・すずめっき鋼板(ターンシート)が使用されてきました。 しかし鉛等の環境規制強化に伴い代替品への移行が進んでいます。代替品として考えられている素材には樹脂、鉄系材料(Alめっき、Sn-Znめっき、ステンレス鋼)があります。
これら材料はいずれも年々厳しくなる各種環境規制(例えばカリフォルニア規制)に対応できることが実証されていないため、それらを客観的に評価する共通試験が必要とされていました。そこで2001年にSASFTが発足し、各種鉄系素材の燃料タンクとしての実証評価を行っています。
JFEスチール(株)では、燃料タンク用素材として、樹脂タンクとは異なり燃料透過の心配が無く、しかもリサイクルにも有利なフェライト系ステンレス鋼の適用を提案し、一連の研究開発を進めてきました。
燃料系部材にフェライト系ステンレス鋼を適用する利点として、以下のことがあげられます。
1) ステンレス鋼は耐食性に優れるため塗装工程の省略または簡素化が可能
2) 燃料の蒸散、リサイクル等各種規制をクリアすることが可能
なお、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼は、応力腐食割れ※3の心配があるためフェライト系ステンレス鋼の適用を選択しました。
フェライト系ステンレス鋼でオーステナイト系ステンレス鋼に最も近い耐食性を有するJFE-SX1を選定し、本鋼の適用技術開発を進めました。
その結果、米国 AISIが主催するSASFTに唯一フェライト系ステンレス鋼でエントリーし、15年-15万マイル保証を前提とした外面腐食試験(塩乾湿複合サイクル試験および塩水噴霧試験)において簡易塗装した本鋼の状態で十分な外面耐食性を有することを実証するに至りました。
また燃料タンクは自動車の許容される空間内で容積を極力大きくするために凹凸の多い非常に複雑な形状となっています。 そこで燃料タンク用素材には耐食性とともに優れた加工性が要求されます。
加工性に関してはすでに「鋼を深く絞れる特性」の指標であるr値(ランクフォード値 ※4)の向上に関する研究開発を成功させており、JFE-SX1で2.3
以上の高r値化を達成(飛躍的な深絞り性向上技術の開発に成功)しています。
今後 高耐食性と高加工性を兼備したフェライト系ステンレス鋼を、ナンバーワン商品として、燃料タンクのみならず燃料系部材として適用すべく、商品化技術開発を進めていきます。
以上
| ※1 |
JFE-SX1:社名の変更により、「RSX-1」を「JFE-SX1」に名称変更。 |
| ※2 |
SASFT:
米国における鉄系燃料タンク用素材選定検討会 Strategic Alliance for Steel Fuel Tanksの略。
AISIが主催。世界各国から自動車メーカー、部品メーカー、塗料メーカー、素材メーカーが多数参加。北米のカリフォルニア規制に対応する鉄系燃料タンク用素材の選定が主目的。
2001年から活動を開始し、2003年2月 デトロイトで開催された2つの国際会議で腐食試験結果を公開した。 |
| ※3 |
応力腐食割れ(SCC):
応力の負荷された状態で金属に割れが生じ破壊に至る現象。特に塩化物環境下での腐食事例が多く、実用上最も問題視されているステンレス鋼の腐食破壊現象とされている。 |
| ※4 |
r値(鋼板に引張り応力を加えて変形させた場合に生ずる、板幅方向と板厚方向の歪みの比):
大きいほど、板厚の減少に対し、板幅の減少が大きいため深く絞る際に破断や強度低下を抑制。成形性、特に深絞り性を向上することができる。 |

(写真) 国際会議に出展した燃料タンク
・ 製作:堀江金属工業(株)
・ 素材:JFE スチール(株)
JFE-SX1 (18Cr-1.45Mo-Ti)
・ レーザー溶接燃料タンク (700mmwx500mmlx120mmh) |
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