概要:
鋼構造物の疲労損傷度を評価するためには,一般に外力条件である応力履歴データが必要である。応力履歴データは,歪ゲージなどを使用して時系列データとして収集しレインフロー法などの計数化法により作用応力レベル(応力変動幅)と作用回数(頻度)に直して使用される。最近では計測と同時に計数化し,計数化したデータのみを記録する装置も使用されている。しかし,疲労現象は相当長い期間の累積によって生じるものであるため,このような計数化処理を長期間にわたって行う方法は,経済的および実施上の制約のために,短期間の測定には有力であっても,長期にわたる計測には必ずしも実用的な方法とは言えない。特に,社会資本として設置されている鋼構造物などは,工場で機械として用いられる物と異なり,季節の影響や交通量の影響などがあるため,数日間の計測データで設置後の全期間を類推するには無理があり,どうしても長期間の変動応力の影響を把握する必要がある。そこで,応力履歴の綿密な記録とまではいかなくとも,簡易に多数の部位の応力履歴の結果として生じる疲労度を長期あるいは短期にモニタリングできる方法があれば,安全性判断や疲労損傷予測を行う場合に,有効な手段になると考えられる。このたびNKKと(株)ジャパンテクノメイトは,広島大学藤本由紀夫教授らと共同で,構造物が受ける疲労損傷度を,小型の金属製試験片に記憶させる疲労センサーを開発した。
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